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ヴァージン航空日本撤退でANAに負担が生じる事情を識者解説

 かつて一世を風靡し、世界の空を席巻した英ヴァージン・アトランティック航空が、日本からの撤退を決めた。25年間にわたって成田―ロンドン線を運航してきたヴァージン航空だが、2015年2月1日の便が最終となる。

 世界の主要キャリアが加わるアライアンス(航空連合)には加盟せず、これまで独自路線をとってきたヴァージン航空だが、日本においては全日空との間で提携を結び、2009年から共同運航便を就航させている。

「アライアンスに加盟しないヴァージン航空にとって痛かったのは、何と言ってもドル箱になることが確実な羽田―ロンドン路線が開設できなかったことだろう。ヴァージン航空サイドは、羽田路線の開設に極めて積極的だったが、日本独自のルールを前に断念せざるを得なかった」(米系大手キャリア幹部)

 ここで言う「日本独自のルール」とは、通称”羽田ルール”と呼ばれるもので、羽田空港で国際線を開設するためには成田空港でも同じ路線を開設・維持しなくてはならない、というもの。

「とは言え成田便に加えて羽田便もということになると、あまりに負担は大きくなり、加えて供給過多に陥ることは明らかだった」(ヴァージン航空関係者)

 このためヴァージン航空は羽田への進出を断念し、合わせて成長の見込めない成田線の廃止を決定したのだ。しかしこの決定によって提携先の全日空に、思わぬ余波が及ぶことになった。

 それというのもヴァージン航空の成田線は、全日空とのコードシェア便になっており、全日空はこの枠を利用することで”羽田ルール”をクリアし、2014年3月から羽田―ロンドン路線を開設させていたからだ。つまりヴァージン航空の撤退により、全日空の持っていた成田枠が消滅することになる。

”羽田ルール”がこれまで通りに適用されるのであれば、全日空は【1】羽田線を閉鎖する【2】成田線を新たに開設する、という2つに1つの措置を取る必要が出てくる。

 いずれのケースでも、全日空には大きな負担が生じることになる。さて、どのような判断を下すのか。

■文・須田慎一郎(ジャーナリスト)

※SAPIO2015年1月号

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