国内

某牛丼店にバイトとして潜入 猛烈に忙しく先輩の指導の様子

「ブラック企業」という言葉が広く認知されるようになって久しい。今もメディアで頻繁に報じられている。果たしてその労働環境はどれだけ“ブラック”なのか。実態に迫るべく女性セブン記者(30代)が大手牛丼チェーンの店員として働いてみた。以下はその潜入取材リポートだ。

 * * *
 編集部からの指令で、大手牛丼チェーン店のアルバイトとして働くことになった。まずは公式ホームページのアルバイト採用フォームに必要事項を記入して申し込む。ほどなくして都内のオフィスで採用担当者と面接となった。

 その場であっさり採用が決まり、研修の日どりが決められた。よほど人材不足なのだろうか。そして11月某日。都内の研修センターで研修が始まった。1日当たり約4時間、3日間のスケジュールで企業理念や注文の取り方、クレームの対処の仕方などを一通り学ぶ。

 説明の時間が長く、覚えるための実践はあまりない。研修は全般的に「詰め込み型」の印象を受けた。毎回、指導してくれる講師役は違い、初日の講師はこう言った。

「ハンディ(注文をとる際に使用する携帯型端末)の上達はボタンの配置とメニューを覚えることが第一。メニューはインターネットでも見ることができるので、自宅でもチェックしておいてください」

 研修初日から時給1120円と交通費が支払われた。きちんとしているじゃないか、と感じる一方で、初日から「持ち帰り研修」を耳にするとは思わなかった。そして翌日、研修で何の前触れもなしに近隣の店舗に連れて行かれる。私以外にもう1名の新人がいた。

「教えたことをやってみてください」(講師)

 研修2日目でまだマニュアルはほとんど覚えていない。見よう見まねで乗り切ったが、もう1人の新人は教わっていないことを客に求められてしまった。トッピングをオーダーされ、まごついてしまったのだ。

「きみ、新人? 違う人に変わってよ」

 客の苛立った声。聞けば、研修の段階で辞めてしまう人も多いという。3日間の研修を終え、最初に配属されたのは都内有数の繁華街にある店舗。オフィスビルがひしめく街の一角にあり、お昼ともなればサラリーマンでごったがえす。

 初日、午前11時に店舗に出勤。途中1時間の休憩を挟んで18時までの勤務だ。カウンターが約10席、テーブル席が6セットある店内にはすでに2人のクルー(アルバイト)がおり、3名の客が牛丼を食べていた。

 クルーの1人で店長格の30代と思しきTさんに案内され、更衣室で着替えをすませる。マニュアルでは、異物混入を防ぐために帽子からズボンに至るまで計14か所、28往復の「コロコロローラー」での掃除が定められているがローラーが見当たらない。

「更衣室にコロコロがなかったんですが…」(記者)
「そこにあるけど誰も使ってないよ」

 もう1人のクルー・Kさんが答える。こちらは少し若くて20代半ばに見えた。ここではコロコロのマニュアルは守られていないようだ。

「まずは店のどこに何があるか、勝手に覚えておいてね」(Tさん)

 忙しいからだろうか、初出勤にもかかわらず先輩たちは何も教えてくれない。

 12時になると近くのオフィスから一斉に客が来店し、店内はものの5分で満席となった。

「牛丼大盛りのつゆだく」
「牛皿定食 2倍盛り」

 矢継ぎ早に注文が入る。

「Aさん(記者のこと)! バッシング(丼などの片づけ)を中心にできるだけ速く動いて!」

 一緒にホールを担当するKさんから少しピリピリした口調で指示が飛ぶ。厨房から次々と商品が出され、両手に抱えて提供する。そして戻りがてら、客が食べ終えた丼を片づけ、小走りで厨房にトレーごと置いてレジへ急ぐ。ひたすらその繰り返しだ。マニュアルに、移動は「小走りで毎秒2歩」と細かく定められているため、歩くことなどできない。

 約2時間、店内をめまぐるしく駆け回り、「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」と大きな声を出し続けていると、のどが渇く。しかし、店の混雑ぶりから片時たりとも立ち止まることは許されず、水分補給はおろか、トイレに行く余裕すらない。まさに戦場のような職場だ。

※女性セブン2014年12月25日・2015年1月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン