ビジネス

東大合格請負人「偏差値35の野球バカが東大に受かった理由」

東大合格請負人こと時田先生は、東大ノートより白紙がいいと語る

 偏差値35の高校生を1年2カ月で東大合格へと導いた実績を持つ、いま注目の受験コンサルタント、時田啓光氏。氏は自身の実績から“東大合格請負人”を名乗るが、大手予備校に所属する講師ではない。口コミや教え子の紹介などによる家庭教師や塾講師など、草の根的な指導を通じて、1200人以上の生徒を教えてきた。生徒一人ひとりに向き合う指導は親たちからの信頼も厚い。本格的な受験シーズンを前に、時田氏の受験哲学を聞いた。まずは【前編】をお届けする。

 * * *
――偏差値35の高校生が東大に受かるまでの経緯を教えてください。

時田:別の生徒からの紹介で、彼の家庭教師を頼まれたんです。お母さんに会うと第一声、「うちの子は馬鹿なんです、馬鹿なんです……」って、申し訳なさそうに仰いました。でも、初めて彼の部屋に入った瞬間に私は、「この子、東大くらいは受かるんじゃないか」って思ったんです。

――部屋を見て、東大に受かると思われたと。部屋には何があったのでしょう。

時田:360度、野球だったんです。彼は野球が大好きで、プロ野球のポスターからフィギュア、バット、グローブ、ゲーム、観戦ノートなど、野球に関するありとあらゆるもので部屋が埋め尽くされていた。このくらい何かに熱中できる子、周りから“〇〇バカ”って言われるような子は私の経験上、とてつもない力を持っているんですね。

 一つことを突き詰める過程には、必ず試行錯誤があります。疑問が生じたら調べるとか、壁にぶち当たったら新しい道を探ったり、克服したりという問題解決を、日々行っています。だから私は“〇〇バカ”の子が持つ高い問題解決能力を意識化してあげて、勉強に応用していくんです。

――野球を勉強に応用するとは、具体的にどうするのでしょうか。

時田:最初は、いわゆる受験勉強をしませんでした。野球について存分に話してもらったんですね。例えば今シーズンはなぜあのチームが強いの? と聞く。どんどん質問をぶつけて、どんどん答えてもらう。人を言葉で納得させるには、最低限、「国語力」と「数学力」が必要です。文章で表現する力は国語力であり、情報の取捨選択をするのは数学の力なんです。そうやって国語力と数学力を鍛えていきました。

 それから彼は、あらゆるプロ野球選手の打率、防御率を覚えていたんですね。計算は苦手と言っていましたが、打率や防御率がわかるということは、少しヒントを与えれば、数字もわかるようになるんです。

――歴史など、記憶力が必要な科目はどうしましたか。

時田:歴史も野球を活用して覚えていきました。「ピッチャーってどういうタイプ?」と聞くと「積極的でオレ様な人」と言う。「戦国武将でいうと誰かなあ」「信長だね」となる。「キャッチャーはどっしり構えていて全体を見渡すことのできるタイプだよね」「じゃあ家康かな」と。「信長の後ろに控えているのが明智だから、明智はセカンドだね」とか。そんな会話を通じて、彼は次第に歴史に興味を持っていきました。

 いまお話したのは単純化した一例ですが、つまり大事なのは“関連付ける”ことです。自分が好きなあれと勉強は一緒なんだな、と気付くと、子供は興味を持つようになる。勉強への苦手意識や抵抗感が薄まってくる。すると自分で勝手に調べたり、質問を始めるんです。彼は当初、東大を目指したわけではなかったのですが、そこから急速に伸びました。でも、彼よりももっと変わったのはお母さんです。

――お母さんが変わると、子供の成績にどう影響しますか。

時田:「うちの子、馬鹿なんです、ダメなんです」って言っていたお母さんが、子供の成績が上がるのを見て、ニコニコするようになる。短所だと思っていた子供の特徴が長所だったと気づいて、物の見方も柔軟になっていく。そんな母親を見て、子供はますますやる気になります。勉強って一人でやるものじゃないんですね。私は生徒たちに、「受験勉強は大切な人のためにやるものだ」と伝えています。

――受験勉強は、自分のためではなく、他人のためだと。それはどういう意味でしょうか。

時田:人って案外、自分のためだけには努力できないものなんです。合理的に見えて、それだけで動いていないのが人間なんですね。

 私は最初の授業で生徒にこう言います。受験勉強を頑張って、課題を一つ克服できたとする。この「努力して壁を超えた経験」があれば、あなたの大切な人――家族や友人、今あるいは将来の恋人――が苦しんでいるとき、困ったときに、自信をもって手を差し伸べられるようになると。経験したことでないと、人は語れませんから。受験でそういう力を鍛えられたらいいよね、一緒にやってみない? と問いかけて、「うん」と賛同してくれた子と一緒に勉強を始めます。

関連キーワード

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン