――先生は「教え合う」ことを指導の理念とされていますが、これは、“人のため”に勉強するといういまのお話と関連性がありますか。
時田:教え合うのは人のためでもあり、自分のためでもあります。「教え合う」ことで確実に成績が上がります。これは私自身が経験したことです。
私が高校時代に通っていた塾は特殊で、先生は一度教えたことを二度と教えてはくれないんです。その後は、先生の話を聞いて理解した生徒が、わからない生徒に教える。私は数学が得意だったので、数学については他の生徒や後輩に教えることになりました。最初は、「自分の当たり前と、他人の当たり前が全然違う」ことにびっくりしましたね。そこから、どんな質問にも答えられるよう普段の3倍勉強した。
結果的に、自分の成績も上がって全国模試1位になったし、後輩に「先輩の教え方、上手ですね」って褒められて、有頂天にもなれた(笑)。この時の経験がいまも生きています。
――勉強においても、他人とのコミュニケーションが大事なんですね。
時田:生徒が聞きっぱなし、先生が言いっぱなしの指導ではダメだと思います。学校でも教え合うといいんですよ。同じくらいの成績の仲間を見つけて教え合うことができれば、進学校に通ってなくても東大に行けると私は思いますね。
――先生はカフェで授業もされるとお聞きしました。それはなぜでしょうか。
時田:受験が近くなると、家族中がその子に気を使って静かにしている、という家庭も増えます。また最近の大手予備校は、机がパーティションで区切られていて、個室のようになっているところもあるようです。集中するにはいい環境ですが、受験当日は、周囲の人が目に入り、鉛筆や紙を擦る音などが聞こえる中で試験を受けるわけです。ですから私は、完全な個室ではなく、ある程度周囲の雑音などが五感に入ってくる場所で集中できる力も大事だと考えているんです。
本番を想定するという点でもう一つ。東大の数学の回答用紙って真っ白なんですよ。「東大ノート」があるときから流行りましたが、これには罫線やドットが用意されています。綺麗なノートを作成するにはとても便利ですが、真っ白なページに自分でまとめる力も日頃から付けておくといいと思いますね。
■時田啓光(ときた・ひろみつ)/株式会社合格舎代表取締役。下関出身、京都大学大学院卒業。日本プレゼンテーション協会認定講師。これまでに延べ1200名を指導し、偏差値35の生徒を東京大学合格に導く。東京・千葉・長野・広島などの全国の学校教育機関や各種団体で講演活動も行うなど、幅広く活動している