国内

コンビニより多い歯科医の数 ワーキングプア化するケースも

 近ごろ、抜かなくても大丈夫な歯を抜こうとする歯科医が増えているという。歯科医に何が起きているのか──。

「歯医者の基本理念は『歯を残すこと』です。しかし今は手の込んだ治療を嫌がり、保存できる歯まで安易に抜歯する歯科医が増えています。 “手抜きと過剰”が横行しているんです」

 そう嘆くのは、『この歯医者がヤバい』(幻冬舎新書)の著者でサイトウ歯科医院(東京・渋谷)の斎藤正人院長。現在、斎藤さんの元には納得できる歯科治療を求めて全国各地から患者が押し寄せている。

 なぜ、多くの歯科医は“手抜きと過剰”に走るのか。斎藤さんは、「歯科医を取り巻く環境の悪化が大きな要因」と言う。

 現在、全国の歯科医は10万人あまり。歯科診療所は右肩上がりで増え続け、2013年には約6万8000軒に達した。これは、全国に約5万店あるコンビニより多い数だ。

 保険診療だけで充分な収入が得られる歯科医の適性数は人口10万人あたり50人が目安とされるが、今や全国平均で約80人。とくに東京は10万人あたり約120人と歯科医の過剰がひどく、「都心で石を投げれば歯科医に当たる」といわれるほどだ。

 歯科医が街にあふれた結果、待遇はどんどん悪くなっている。公益社団法人日本歯科医師会・日本歯科総合研究機構の『歯科医療白書』(2008年度版)によると、歯科医を収入順に並べて5つに分け、下位20%の最も収入が少ないグループの平均月収を計算すると、約15万7000円だった。年収200万円に満たないのだ。

「バブル期までの歯科医は年収2000万円で高級外車や豪華クルーザー所有が当たり前の花形職業でしたが、時代が大きく変わりました。国の歯科医療費が厳しく抑制されて市場が縮小傾向にあるなかで歯医者が増えて競争が激化し、“歯科医格差”が拡大しました。“ワーキングプア歯科医”も増えています」(斎藤さん)

 厚生労働省によると、2013年9月までの1年間で廃業した歯科診療所は1405施設。1日に4軒近くが廃業している。

 こうした苦境において、“手抜きと過剰”で利益を得ようとする「ペテン歯科医」が増加しているのだ。医療ジャーナリストの田辺功さんの解説。

「最近は抜く必要のない歯を抜歯して保険点数を稼いだり、保険診療だけでは生計を立てられず、患者が医療費を全額負担する自由診療を強引にすすめたりする歯科医が増えました。高額のインプラント治療に誘導する悪質なケースも見受けられます。強引で稚拙な治療によるトラブルも増えています」

※女性セブン2015年1月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン