規模こそ中堅だが、技術力では大手を圧倒する山峡の命運は、人工水晶の核となる高純度のマザークリスタルの確保にかかっていた。取引先から引き抜かれ、義父の勇退後、3代目社長に就任した藤岡は、先々代の遺品にあった上質の水晶の産地を探すべく、デリーに駐在中の元同僚〈徳永〉と一路クントゥーニへ飛ぶ。

 現地の宝石商と接触し、採掘会社社長〈チョードリー〉の屋敷に招かれた彼は、そこでメイド兼〈性接待〉役として働くロサと出会う。漆黒の肌に細い手足。驚いたのはその記憶力だ。ルールも知らないチェスの盤面を一目で憶え、何語でも完璧に暗誦するロサの太腿には、見るも無惨な火傷の痕が…。その才能も一因となり藤岡は彼女を何とか救いたいと強く願うようになる。

「人間として当然の感情ですね。1人救っても何も変わらないかもしれませんが、まだ10代の子供が春を売らされ、〈人間爆弾〉にされる現実を、放置していいのか。確かに異文化を認めることは大事。でも『13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない』なんて文化とは言えないし、特にインドでは伝統社会が植民地時代に非人道的に歪められた経緯がある。それを文化の多様性という一言で片付けていいはずもないですよね」

 やがてロサの助けもあり産地の村を特定した藤岡は、サンプルを入手し、ロサを救出。徳永の下で働き始めるや頭角を現わし、海外にも留学する。一方、藤岡は指定部族の自立を支援するNPOの協力を得て村との直接取引を選ぶが、チョードリーが〈邪な種〉と呼ぶロサの哀しい過去や村の因襲、極左勢力の暗躍等々、さらなる壁に阻まれるのだ。

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