散らかしたら散らかしっぱなし。仕事、仕事で家庭や子育てを顧みない。プライドばかり高くて、すぐへそを曲げる…。とかく男は扱いにくいと、あきらめモードになっていませんか? 3組に1組の夫婦が離婚する時代、仕事を極めた賢妻である料理研究家・浜内千波さん(60才)に、専門分野から編み出した夫操縦テクニックを伺った。
みかんやおまんじゅうは、いつも半分こ。お互い忙しくてほぼ深夜になるが、必ずふたりで夕食をする仲のよい浜内さん夫妻。「勇造くん」と浜内さんが呼ぶ夫・寺岡勇造さん(60才)は、CMプロデューサー。23才で知り合ってから共に歩み続け、今年でお互い還暦を迎える。
「私たちは夫婦の食事時間をとても大切にしています。外食はせず、必ず私がつくります」と、浜内さん。
深夜に帰宅した夫に「めし」と言われてムッとする妻たちも少なくないが、元気の源は食事であり、食べながら笑顔で会話することは尊いことだと浜内さんは続ける。
「私だって疲れたと思うことはありますが、夫が不健康な食事をして病気になるより、明日も元気でいてくれた方がいい。ですから、食事は野菜中心。サラダ、蒸す、煮る、炒める、スープの調理法から3品をつくって、お酒と会話を楽しみます」(浜内さん)
そして、後片づけは夫の担当。食器を洗ってからシンク内も乾拭きして、布巾を洗って完了。当人は「別に苦ではないです」と言い、ティータイムにお茶をいれるのも夫の担当と、分業している。
「家事に価値を見いだせない男性も多いようですが、一度やってもらうと妻のありがたみがわかるはず。もちろん最初から上手にできる男性は少ないので、そこは忍耐が必要。手伝ってくれたら、感謝を言葉で伝えて。言葉って、本当に大切。常日頃でも“ごめんなさい”のひと言で、波風が立たずに、ことが丸く収まることだってありますから」(浜内さん)
それにふたりで家事をすれば、コミュニケーションが生まれる。「あれとって」「これはどうする?」と、会話が生まれると、自然と仲よくなれるのだ。
家庭内で嫌だと思うことは、夫にどんどん言った方がいいとも。
「夫が電気をつけっぱなしにしていたなら、遠慮せずに言います。“シニアだから忘れちゃうのよね”って、100%皮肉を込めて(笑い)」(浜内さん)
それに対してご主人は、「怒ってもしょうがない。あうんの呼吸で“いい言葉見つけたな”って、かわします。けんかしてもなんの得もない。私たちの年代になると、お互いの性格もわかっているから、“ここまで言ったらダメ”の線でセーブし合わないと」
男と女の考えは違うもの。闘っていたら疲れるばかり。一歩引いて、ことを収めるワザを持つことも夫婦円満の秘訣というわけだ。
「私はね、家事は価値あるものだと思うんです。成果が目に見えにくいので、お給料をいただけませんが、頑張った分の恩恵はもらわないと。バッグやアクセサリーの目に見えるものをお買いなさい、と言いたい。ごほうびがあると、また頑張れるでしょう。女ってそういうものよ。
持ちつ持たれつの夫婦関係がバランスを保つのです。“欲しい物があるの”と、夫の好物を食卓に並べてお願いしたらいいんです」(浜内さん)
そんな妻に、「妻がぼくの好きな料理をつくってくれるのは、うれしいもの。ぼくはグリーンピースご飯が出てくるとご機嫌になる。その手は効果ありますよ」と、勇造くんもうなずく。これが本当の“胃袋をつかむ”ということかもしれない。
※女性セブン2015年3月19日号