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復興で被災地の子供の心境変化 ゲーセンより道路整備求める

 東京電力福島第一原子力発電所から西へ20kmの福島県双葉郡川内村。詩人・草野心平の『蛙のうた』で有名なモリアオガエルの繁殖地として、国の天然記念物に指定されている平伏沼(へぶすぬま)など豊かな自然の中に暮らしが息づく村だ。

 原発事故の直後から全村避難を余儀なくされていたが、2014年10月1日に、村の東部に出されていた避難指示が解除された。この地区の139世帯274人の人々が制限なく自宅に再び住めるようになったが、避難先から帰還した人はごくわずかだ。

 村で唯一の小学校、川内村立川内小学校。事故の前の生徒数は114人だったが、現在在籍するのは29人だ。学校が再開した1年後の2013年4月に赴任した塙(はなわ)広治校長(50才)は「川内小から元気を発信していきたい」と、子供たちとともに復興子供教室を開いたり、村の伝統行事である獅子舞を体験させるなど積極的に取り組んでいる。

「村に帰るにあたっては汚染の問題はもちろんのこと、雇用やインフラなどさまざまな課題が山積しています。だからこそ私たちは、川内の素晴らしさを改めて学ぶことで、村の未来を子供たち自らの力で考えるようになっていってほしいと思います」(塙校長)

 福島県南相馬市出身の塙校長は、震災当日、福島市内で教育委員会の会議に出席していた。

「南相馬に戻るまで車で4時間かかりました。自宅の倒壊は免れましたが、家の中は物が散乱。それ以上に今も脳裏から離れないのがヨッシーランドの光景です」(塙校長)

 南相馬市原町区の介護老人保健施設・ヨッシーランドは津波到達最終地点に近い場所だったため、36人が死亡、1人が行方不明になった。建物はかろうじてその外観をとどめているものの、介護ベッドや車椅子、医療器具などが道路に流されてきていた。塙校長の自宅はそこから、わずか2.5kmしか離れていなかったという。

「あと少し、家が向こうだったら…余震のたびにそう思いました。自分はPTSD(心的外傷)にはならないと思っていましたが、その後もしばらく、あの光景が目に浮かび、自分も死ぬんじゃないかと眠れない日が続きました」

 原発事故から4年が経った今も依然、放射能による汚染は深刻なままだ。塙校長は復興を通して子供たちが変わってきたと話す。

「川内小の子供たちは、“ゲームセンターより道路を整備してほしい”と話すようになりました。“復興は大人だけがやるものではなく、自分たちも一員としてやらなければならない”とも考えています」

 子供たちは川内村で生活する意義や誇りを着実に取り戻しつつある。

※女性セブン2015年3月26日号

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