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「山と海」のボトルドウォーター 採水地により何が違うのか

これから気温が上がるにつれ、水分補給が重要になってくる。飲料メーカー各社はペットボトルのボトルドウォーター を販売しているが、何が違うのかよく分からないというのが正直なところではないだろうか。硬度が高くダイエット向きとされる「コントレックス」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)、ミネラル成分「バナジウム」が入った「富士山のバナジウム天然水」(アサヒ飲料)など、特色は様々。 

 工夫を凝らした差別化を各社行っているが、こうした特色のそもそもの大元にあるのが「採水地」である。各社成分や特徴をPRするも、結局どこで採水するかに行きつく。「エビアン」や「ヴィッテル」「ゲロルシュタイナー」といった海外から採水した水に加え、国内でも「山」「海」など多岐にわたる。結局、採水地によって何が違うのか。

■森を育て、山の水を採る

サントリー食品インターナショナルが販売している「サントリー天然水」は、「南アルプス」「奥大山」「阿蘇」の3つのエリアで採水し、つくられている。また、サントリーグループでは全国13都府県の18ヶ所の森林を「天然水の森」として設定し、安定的な地下水確保のための水源涵養活動を行っている。これはボランティアというわけではなく、あくまでも工場の水源エリアの森林で行う事業活動との位置づけだ。サントリーホールディングス エコ戦略部チーフスペシャリスト兼サントリーグローバルイノベーションセンター水科学研究所主席研究員の山田健氏はこう語る。

「森を育むことが良質な水資源の保全に繋がるということから、2000年に『天然水の森』の企画が始まり、2003年、『天然水の森 阿蘇』で活動がスタートしました。森ごとに科学的な調査・研究を行い、その森に適した整備計画を立て、間伐や植樹などの整備活動を行っています。正常な生態系づくりを通じた豊かな土壌を育むことを目指しています。

元々は、サントリーの工場で汲み上げる量以上の天然水を育むことを目標としていましたが、現在およそ8000haに達したその面積は目標を大きく超えています。山手線の中が大体6300haですので、それ以上の面積です。2020年までに汲み上げる地下水の2倍の量を涵養する面積にあたる12000haを目指しています」

 各天然水の品質は土地によって特徴はある。それは、土壌や基岩の違いによって影響される。南アルプスは花崗岩が中心で「すっきりとキレのいい味わい」、奥大山は安山岩質の火砕流で「やわらかで飲みやすい味わい」、阿蘇は火山灰土壌や溶岩を流れてきた水で「程よいミネラル分を含み、口当たりがよくまろやかな味わい」だ。日本の水は基本的には軟水(硬度100以下)で、硬度は阿蘇が約80、南アルプスは約30、奥大山は約20だ。

「サントリー天然水」は「南アルプスの天然水 スパークリング」「南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」という「天然水」ブランドの各商品にも使われている。

一般的には、ウイスキーはそのマザーウォーター(ウイスキーの仕込水に使われている水)との相性がいいと言われており、例えば同じ南アルプスの麓、白州でつくられている「シングルモルトウイスキー 白州」と、「南アルプスの天然水」で作った水割りや「南アルプスの天然水 スパークリング」で作ったハイボールなどを同社は勧めている。山田氏もこう語る。

「ウイスキーは、採水する場所によって、はっきりと違いが出ます。ですから、白州の水を山崎に持ってきてウイスキーをつくったら、通常の山崎のウイスキー原酒とは異なる味わいになることでしょう」

■海からミネラル分豊富な水を採る

 一方水資源確保については「海の水」を使うやり方もある。「海洋ミネラル深層水」が特徴の商品・miuを販売するダイドードリンコマーケティング部商品開発担当の川北庸平氏は、山の水と海の水については「それぞれ、自然由来の水であるという部分は共通しています。日本の国土の7割が森林なだけに、山の水は馴染みがある水ですよね。一方、日本は島国でもありますし、海は地球の7割を占めるので、こちらも馴染みがあるのではないでしょうか」と語る。

 現在は高知県室戸市沖の海底から、市の許可を得た上で採水をしている。室戸市が運営する海洋深層水研究所と情報交換を行い、市の基準に従い品質管理を行い、商品化に至った。採水地が複数であれば、輸送コストは下げられるものの、室戸に採水地を限定する理由は何か。川北氏は語る。

「確かにコストは高くなりますがそれを超える、消費者への利益を提供していきたいのです。これが『ミネラル』であり『海洋深層水』というところにあります。採水地として、室戸が最適だと判断しました」

そもそも「海の水」とは一体どのようなものなのか。海洋深層水は、海の200mよりも深い場所から取水するもので、清浄性とミネラルや無機栄養塩類を含む富栄養性が特徴としてあげられる。miuはその海洋深層水をくみ上げ、不純物と塩分を取り除いた成分を純水に添加する形で利用している。海洋深層水について、川北氏はこう語る。

「汗などで失われたカリウムやナトリウムをはじめとする豊富な種類の『ミネラル』を含んでいることから海洋深層水に着目しました。今、様々な水があるだけに、消費者が水を選べる時代になっています。miuは『海洋ミネラル深層水』の価値にクローズアップしていきます」

 サントリーの「南アルプスの天然水」の以前使われていたキャッチコピーに「山の神様がくれた水」というものがある。この言葉に込めた意図は同社によると「『南アルプスの天然水』は、山や森に雨が降り、長い年月をかけ自然の中でろ過され、磨かれた水です。この天然水ができる長い年月の人の手が及ばない自然の営みを『山の神様がくれた水』というコピーで表現しました」とのこと。

 ダイドーの「海」についても同様の考え方を持っており、前出・川北氏は「miuに使われている海洋深層水は、何千年、何百年、地球全体を巡って熟成された中で出てきた点が特徴です。海からもらったこの名水をよりお届けしたい、と考えています」と語る。

いずれにしても「地球」を大事にすることが我々の生活を維持してくれるということになるようである。

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