自民党新総裁候補の(左から)岸田文雄氏、小泉進次郎氏、高市早苗氏(時事通信フォト)
参院選の大敗を受けての「石破退陣」報道や総理本人によるその否定など、永田町は大混乱の様相を呈している。だが、この政権が余命幾ばくもないことは確かだろう。党内ではすでに、“ポスト石破”に向けた動きが活発化している。そのなかには、参院選で大躍進した政党と手を組む動きもある。いよいよやってくる「政界大再編」の内実について、当事者らが証言した。【全3回の第1回】
岩盤保守の票を取り戻す
政治の焦点は自民党総裁選と次の政権の枠組みがどうなるかに移った。
参院選で消費税減税などを掲げた野党に大敗したことを受け、「総裁として責任を取れ」といち早く首相退陣を求めた西田昌司・参院議員が語気を強める。
「次の総裁選こそ今後の自民党の命運を決める。このまま財務省言いなりの財政再建・増税路線を続けるか、減税・積極財政路線に転換するのかが最大の争点になる」
有力候補と見られているのは再登板に意欲的な財政再建派の岸田文雄・前首相、積極財政派の高市早苗・前経済安保相、「減税より現金給付」とどっちつかずの小泉進次郎・農相だ。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「総裁選はその3人が軸になるでしょう。話し合いで選ぶなら岸田の再登板もあり得るが、党員投票が行なわれれば高市vs進次郎の争い。石破首相を担いだ勢力が進次郎を後継者に担ぎ、前回のように党が2つに割れて決選投票まで進む可能性もある」
総裁選でカギを握るのが参院選大敗の要因となった消費税減税の扱いだろう。自民党内では再び減税論が高まりつつある。
参院選敗北の責任を取って選対委員長代理の辞表を出した河野太郎・前デジタル相はテレビ番組でこう言ってのけた。
「今回、負けましたから、現金給付より消費税減税になっていくのではないか」
これに危機感を強めているのが石破政権を牛耳ってきた“増税マフィア”の総本山・財務省だ。財務省OBはこう話す。
「財務省としては消費税減税をさせないために、ポスト石破は岸田再登板か、あるいは進次郎を総裁にして親財務省政権を作りたい。備蓄米を随意契約で安く売却する仕組みを編み出して“進次郎コメ劇場”を演出したのは財務省であり、進次郎総裁ならうまく操れると考えている。消費税減税派である高市総裁の誕生だけは絶対阻止したいはずです」
だが、自公が衆参とも過半数割れした以上、誰が総裁になっても他の野党の協力がなければ政権維持は困難だ。自民党が政権を維持するためには、総裁候補たちは具体的にどの政党と組んで政権を安定させるかの方向を示す必要がある。
「岸田再登板なら、同じ財政再建派の野田佳彦・代表の立憲民主党との連携、進次郎総裁なら社会保障改革の方向が一致する日本維新の会との連携で政権安定を目指すことになる」(同前)