ドラマでは秀吉に「オレはジンギスカンのように大陸を征服し歴史に名を残したい」と言わせ、朝鮮を従え明征服を目論む。これは高麗を手先に日本征服を狙った13世紀の元(中国)と同じ手口だ。したがって「壬辰倭乱」で明は、朝鮮が日本の手先になるのではないかとしきりに疑った。
停戦交渉はもっぱら明と日本との間で行われ、柳成竜ら朝鮮側は停戦反対論だったが軍事力で弱く発言権がなかった。これも朝鮮戦争で中朝と停戦を進める米国(国連軍)の方針に韓国(李承晩大統領)が反対したのと似ている。
21世紀の今、日本の大陸再々侵攻など想像もつかないが、韓国にとっては強大化する中国を前に、中国と日米のどちらにより身を寄せるのか態度を迫られつつある。
ドラマ『懲ビ録』は日本にとっては北方(中国・朝鮮)への深入りに対する大いなるマイナスの教訓になるが、韓国は今回、何を教訓にしようとするのか。おそらく「民族的主体性の確保」がテーマになると思われるが、明(中国)との関係がどう展開されるか見ものだ。
■文/黒田勝弘
※SAPIO2015年5月号