「庶民の食」となると大衆的な風情のある飲食店が取り上げられがちだが、肉を提供するファミリーレストランにも地域性はある。横浜を中心としたファミリーレストランチェーン「ハングリータイガー」ではレア気味に仕込んだハンバーグを、客席で提供するときアツアツの鉄板の上で調理の仕上げを行う。
奇遇にも、隣の静岡県のファミリーレストランチェーン「さわやか」でも似たような方式でハンバーグを提供しているが、焼きが強めのハングリータイガーは洋風ソース。対して「さわやか」は焼きすぎない状態で提供し、ソースもオニオンソースと味つけは似て非なるものと考えていい。神奈川から静岡へと足を延ばしての食べ比べで、極私的肉祭りを開催するのもまたよし、である。
ちなみに、神奈川県民、静岡県民ともに双方の地元チェーンを全国チェーンだと思い込んでいるフシがあるが、「ハングリータイガー」「さわやか」ともに地元密着型のチェーンである(10代を神奈川県で過ごした筆者も、当時、ハングリータイガーを全国チェーンだと思い込んでいた)。
「肉祭り」の行列を楽しめるならば、その高揚感も捨てがたい。だが必ずしも「祭り」で肉を食べる必要があるわけでもない。肉と対峙したその瞬間、己の肉祭りは始まるのだ。やや長文になったので、中部以西の「地元肉」については、次回に譲らせていただく。