これだけでもハードルの高さが伝わったかと思うが、問題なのはここから先だ。この経済的にお得な公立専門学校の入試の選考基準がいまひとつ不明なのである。もうちょっと踏み込んで言えば、おっさんがどんなに試験でいい点を取っても落ちまくる、という話をしばしば聞くのだ。
地域によって、あるいは学校によって、さまざまではある。東京でいえば、都立青梅看護専門学校の新入生総数は80人、そのうち19人が男のようだから、男性率は約24%だ。男性看護師率の6.2%をはるかに上回る。だけど、青梅のような学校はレアケースで、同じ都立でもほとんどの年の男性新入生がゼロという学校もある。
さらにつけ加えると、公立看護専門学校が欲しい学生は高卒まもない女子であり、社会人枠が設けられていたとしても女性優先、男なら20代までが選考対象、という暗黙のルールがまかり通っているようなのだ。私の知り合いで国立の看護専門学校に通っていたアラフォーの男性が、今年、めでたく看護師国家試験に合格し、希望の総合病院に就職したのだけど、彼もこんなふうに言っていた。
「私は県立や市立の専門学校を受けられるだけ受けて全部落ちました。うちの学校には30歳オーバーの男子学生がけっこういるんですけど、みんな自分も同じだって言うんですよね。筆記も面接も手ごたえがあったのに落ちまくった、と」
ネット上にもこの手の話はあれこれ漂っている。粘着気質のやつが大げさに騒いでるな、と思われる書きこみもあれば、これは心からのおっさんの嘆きだと感じ取れるものもある。「おっさんは不利です」と明記している学校は見当たらないが、「おっさんですが、公立看護専門学校に入学しました!」という喜びの書きこみもいくら探したって出てこない。
30過ぎた働く男が、その頃になってようやく自分の歩むべき道を見つけた、というケースはいくらでもある。その道を阻んでいないか看護の世界は、と僭越ながら申し上げたいのである。
実習先がおっさん実習生の受け入れを嫌がるからなど、事情は何かしらあるのだろう。だけれども、せっかくの「看護の日」だ。〈男女ともに、誇り高い職業としてナースをライフワークとする人々〉がますます増えんことを門外漢ながら願うのである。