確かにウェイクの尋常ならざる積載性は魅力だが、ここまで広くなくても、美女とバーベキューや釣りに行ける軽自動車はある。たとえば、前回取り上げたハスラーでも十分広い。
というより、今の軽自動車は、スズキ・アルトやダイハツ・ミラなどのベーシックなタイプを除けば、ほとんどのモデルが十分すぎるほど広い。中でもウェイクは最大級にデカいのだが、デカすぎるが故のネガがあるので、かえってハスラーくらいにしておいた方が、ツブシが効く。ハスラーくらいの大きさなら、エンジンはターボなしでもそこそこ山道を上ってくれるし、首都高の合流で怖い思いもしないですむはずだ。
ハスラー以外では、ホンダのN-BOXを推したい。室内のサイズはウェイクより少し下でハスラーより少し上。そしてN-BOXの美点は、機能的な直線基調のデザインにある。シンプルで、所帯じみた雰囲気が薄く、いかにも「アウトドアの道具」という風情。これなら美女にも好感を持って受け入れられそうだ。
ウェイクも見た目は十分合格だが、美女が車酔いしてダウンでもされたら、オッサンの綿密な計画が水泡に帰してしまう。それに価格が200万を超えるとなれば、カミさんも黙ってはいないだろう。あらゆるリスクを最小限に抑えたい安定志向のご同輩には、ハスラーかN-BOXをおすすめする。
■清水草一:編集者を経て、フリーライターに。「自動車を明るく楽しく論じる」がモットーの53歳。現在、フェラーリ・458イタリア、BMW・335iカブリオレ、トヨタ・アクアを所有。日本文藝家協会会員。
※週刊ポスト2015年5月22日号