国内

安全保障の見直しを巡り机上の空論が国会で延々続く理由とは

 南シナ海の現実が国会論議を追い越していく。安全保障法制の見直しをめぐる政府と与野党の論戦をみていると、そんな思いにとらわれる。これで日本は大丈夫なのか。

 国会の議論は多くが仮定に基づいている。野党の質問は、どういう場合に「自衛隊は他国の領域でも戦うのか」「集団的自衛権を行使するのか」といった具合だ。

 これに対して、政府の説明も「日本海で邦人輸送中の米艦が攻撃されたら」とか「ホルムズ海峡に機雷が敷設されたら」といった話になっている。

 これらは、どちらも「もしも○○になったら」という「たられば論」だ。いま日本が直面しているのは、そんな仮定の話なのか。そうではない。中国が尖閣諸島や南シナ海で日本や周辺諸国を脅かしている現実の脅威である。

 本音を言えば、政府も野党もそれは分かっている。なのに、なぜ真正面から現実の脅威に向き合おうとしないのか。それには理由がある。

 政府としては中国を脅威と名指しすれば、相手を一層刺激して事態を悪化させかねない。だから、できるだけ中国と言わずに「力による現状変更は認めない」と言う。

 一方、野党もはっきり中国の脅威を持ち出すと「では中国にどう対抗するのか」と逆襲されてしまう。それはなんとか避けたいから、あえて中国脅威論を言い出さない。それで、双方が机上の空論を延々と続けるはめになっているのだ。

 そうしている間に、事態はどんどん進んでしまった。ゴールデンウィークに安倍晋三首相と米国のオバマ大統領が日米同盟の強化を高らかにうたいあげたと思ったら、中国は南シナ海で岩礁埋め立て・軍事基地化を急ぎ、米国は黙っていられなくなった。

 それだけではない。ロシアと中国は地中海で合同軍事演習を始めた。8月には日本海でも演習する予定だ。中国どころかロシアまでもが“参戦”してきたのだ。

 ロシアにしてみれば、クリミア問題で自国を制裁している日米欧をけん制するうえで、中国の援軍は願ってもない。中国にしても、尖閣諸島をめぐって日本へ圧力を加えるのにロシアが味方してくれれば絶好の展開である。

関連キーワード

トピックス

男性部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長
「青空ジップラインからのラブホ」「ラブホからの灯籠流し」前橋・42歳女性市長、公務のスキマにラブホ利用の“過密スケジュール”
NEWSポストセブン
自民党総裁選のインターネット討論会に出席する小泉進次郎農林水産相(右)。左は高市早苗前経済安全保障担当相=9月30日、東京・永田町の同党本部(時事通信フォト)
《「去年より渋みが増したか」》小泉進次郎氏、ステマ問題で総裁選への大きな影響なし? 追及しない他の4候補は「問題を長引かせたくない」が本音か
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
ファーストレディー候補の滝川クリステル
《ステマ騒動の小泉進次郎》滝川クリステルと“10年交際”の小澤征悦、ナビゲーターを務める「報道番組」に集まる注目…ファーストレディ候補が語っていた「結婚後のルール」
NEWSポストセブン
新井洋子被告(共同通信社)
《元草津町議・新井祥子被告に有罪判決の裏で》金銭トラブルにあった原告男性が謎の死を遂げていた…「チンピラに待ち伏せされて怯えていた」と知人が証言
NEWSポストセブン
東京・表参道にある美容室「ELTE」の経営者で美容師の藤井庄吾容疑者(インスタグラムより)
《衝撃のセクハラ発言》逮捕の表参道売れっ子美容師「返答次第で私もトイレに連れ込まれていたのかも…」施術を受けた女性が証言【不同意わいせつ容疑】
NEWSポストセブン
昨年、10年ぶりに復帰したほしのあき
《グラドル妻・ほしのあきの献身》耐え続けた「若手有望騎手をたぶらかした」評 夫・三浦皇成「悲願のG1初制覇」の裏で…13歳年上妻の「ベッドで手を握り続けた」寄り添い愛
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン
愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン