ライフ

高カカオチョコレート 認知症予防や高血圧対策にも有効との説

 高齢化社会にともない、増加している認知症。2025年には、認知症の高齢者が700万人になるとの推計値が今年1月、厚生労働省により発表された。早いうちから、認知症の予防を心がけたいところだが、そんな中、認知症予防の可能性や血圧抑制作用があるとして注目を集めているのが、高カカオチョコレートだ。

「20年以上、チョコレートの研究をしていますが、たった25gのチョコを食べるだけで、これほどの効果が出るとは予想もしていませんでした」

 こう話すのは、愛知学院大学教授で、食品機能学を研究する大澤俊彦さん。

 昨年6~7月に愛知県蒲郡市で行われた「チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究」には、45~69才の健康な市民約350人が参加。カカオポリフェノールを豊富に含む“高カカオチョコ”を4週間にわたって食べ、その前後で体の変化を測定した。チョコレート摂取期間後は「精神的にも肉体的にも活動的に」。その原因を探っていたところ、BDNFの増加がわかった。

「血液を解析したところ、記憶や学習などの認知機能に関わる“BDNF”という物質の量が有意に上昇したことがわかりました。『高カカオチョコにBDNF増加の可能性がある』ことがわかったのは、これが初めてです」(大澤さん)

 認知症とのかかわりがある“BDNF”とは、一体どんな物質なのだろうか。

 認知症研究の第一人者で、桜美林大学加齢・発達研究所長・大学院教授の鈴木隆雄さんに聞いた。

「たんぱく質の一種で、脳の神経細胞の成長や再生に深くかかわっているといわれています。BDNFは、脳の『海馬』という部分に多く含まれています。海馬は、記憶にかかわる神経細胞が集まっている部分です。アルツハイマー型認知症になると、海馬が萎縮し、重症になると、とくに前側の大きく膨らんでいるはずの部分がなくなってしまいます。そこまで進行すると、『朝ご飯を食べたかどうか』だけでなく、『ご飯とは何か』まで認識できなくなってしまうのです」(鈴木さん)

 鈴木さんたちの研究チームでは、今回の実証研究とは別に、65才以上の約4500人のBDNFを計測した。

「その結果、加齢とともにBDNFの量は明らかに低下することがわかりました。また、同じ年齢でもBDNFの量には個人差があり、BDNFの少ない人は、認知機能が低い傾向にあることもわかっています。このことから、認知機能を維持するためには、BDNFの量を高く保つのが望ましいと考えられます」(鈴木さん)

 国内外の研究から、BDNFを増やす方法のひとつといわれるのが、運動。

「筋肉を動かすと、血管も収縮・拡張して、血流量が増加します。その結果、脳の血流量も増えて、BDNFの産生につながるのでは、と考えています。運動といってもハードなトレーニングではなく、ウオーキング程度で充分です。ただし、認知機能が衰えている人の中には、歩くのも難しい人もいます。もし、身近な食品でBDNFの量を増やせるのが確かなら、認知症の予防にとっては朗報といってよいでしょう」(鈴木さん)

 それでは、高カカオチョコレートにBDNFを増加させる可能性がある理由とは?

「カカオポリフェノールは抗酸化作用が高いため、これを摂取することで酸化ストレスが減り、BDNFが増加しやすくなると考えられます。また、カカオポリフェノールを多く含むカカオ製品を摂取すると脳の血流量が増えることも、BDNFの増加にかかわっているのでは、と予想されます。

 つまり、高カカオチョコレートを食べることで、BDNFが増加し、認知機能が向上する可能性があるということ。これが、うつ病やアルツハイマー型の認知症の予防につながるのでは、と期待されるのです」(前出・大澤さん)

 この実証研究ではほかにも、高カカオチョコが「高血圧の人の血圧を下げ、正常値の範囲内にする」、「善玉コレステロールを増やす」などの効果も明らかに。高カカオチョコが健康にいいといえる理由は、ますます増えてきそうだ。

 チョコレートは食べたくても、気になるのはやっぱりカロリー。

「この研究では、毎日25gの高カカオチョコを食べてもらいました。4週間後に体重やBMI(肥満指数)を比較しましたが、とくに変化はありませんでした」(大澤さん)

 この研究で使われたのは、カカオ分72%の高カカオチョコ。このチョコ25gで約630mgのカカオポリフェノールを摂取できる。カカオポリフェノールの効果を期待するなら、カカオ分70%以上のものがおすすめだと大澤さんはいう。

「カカオ分が多いチョコは、それだけカカオポリフェノールの量も豊富です。ただし、ポリフェノールは苦みや渋みの成分でもあるため、毎日食べ続けるなら、カカオ分が70%程度のものがよいでしょう」(大澤さん)

 体のことを考えるなら、おやつをやめるより高カカオチョコにするのがベター!?

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン