大西礼子。30歳。糖尿病の父親と大学生の妹を抱え、北海道恵庭市の前夫の実家にも10歳の娘がいる彼女は、中央区の自宅で手首を切った。六本木から銀座に移り、支度金500万+契約金500万、日給保証5万円でゴールドに移った人気ホステスだが、遺書はなかった。
うち支度金の25%と日給の10%を受け取るSLNに、ゴールド側は損害賠償1000万円を請求し、有吉に泣きつかれた星村は築地署の後輩〈松尾〉から遺体に覚醒剤の陽性反応があった事実を掴む。そして関係者や、刑事時代から知る銀友会若頭〈松永〉と接触するうち、ゴールドの実質的な経営者や人気俳優〈高山昇〉と礼子の関係など、銀座の今が浮き彫りになるのだ。
「今の銀座のクラブは企業やファンドが背後にいて、昔は滅多に抜かせなかったシャンパンを売上のためにどんどん開けさせたり、株主の顔色を見た売上至上主義に雁字搦め(がんじがらめ)にされてるのはホステスたちも同じです。
今回は人材派遣のことも1冊書けるくらい取材したけど、事務職から風俗まで職種が幅広いのは働く側のニーズがそうさせるらしく、非正規でもいいから働きたいコが昼だけじゃ食えないから夜も働きたいと、ネット登録一つで銀座に来る。特にリーマンショック後は六本木からのコも多いし、異文化が流入しクラブもまた投資対象化した結果、今の銀座がある気がするね」
浜田氏はつまり、死んだ礼子の向こうに無数の追いこまれた女たちを見据え、芸能界の麻薬汚染と美人ホステスの死などつい現実の事件を重ねずにいられない。