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国際社会における友好関係は打算の産物か 過去の事例を紹介

 中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想への参加に対して、日本は慎重な姿勢を見せているが、かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門で活躍した赤城盾氏は、日本が世界情勢の判断を読み違えているのではないか、と疑問を呈している。そもそも日本では「G7からの参加は絶対にない」と考えていたようだが、英国を筆頭に世界各国が雪崩を打ったように参加を表明したことは、その象徴的なものだろう。

 AIIBについては同盟国である米国と足並みを揃えた形になったが、これからの日本は国際社会でどのような友好関係を築いていけばよいのか。過去の事例をもとに、赤城氏が考察する。

 * * *
 国際社会における友好関係は、冷徹な打算に拠らざるを得ない。仲の良し悪しで決められるお友だちの関係ではない。

 20世紀の初頭、イギリスは、不凍港を求めて南下するロシアの脅威に備えて、日本との同盟を求めた。日露戦争においてイギリスは、戦費の調達を助けるとともに、バルチック艦隊の航海を妨害し、日本の勝利に決定的な役割を果たした。中国大陸に出遅れたアメリカは門戸開放、機会均等を訴えていたが、満州に進出する好機と見たセオドア・ルーズベルト大統領は日露戦争の講和を仲介する労を買って出た。

 当時のイギリスもアメリカも、日本が好きだから味方したわけではない。中国大陸における自国の経済的な利益のために、日本が有用と判断したのだ。

 ノーベル平和賞はもらったものの意に反して満州に得るところのなかったルーズベルトは日本の脅威を語るようになり、ロマノフ朝が倒れてロシアの脅威から解放されたイギリスは日英同盟を止めた。果たして、日本が中国大陸における最大の脅威となれば、両国ともに日本と戦う蒋介石の国民党を強力に支援した。

 日本軍が去った後、1949年に共産党との内戦に敗れて台湾に逃れた蒋介石は、大陸反攻の夢かなわず、1971年にはアメリカに見捨てられた。ちなみに、イギリスは、いち早く1950年に共産党の建てた中華人民共和国を承認している。

 過去100年、東アジアの情勢がかくも流動的であったことは忘れないほうがいい。

※マネーポスト2015年夏号

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