ユーシンは過去に2度、社長を「公募」したことがある。最初の公募は2010年7月。上場企業としては前代未聞の試みだった。
1722人の応募があり、当時49歳だった元外務官僚が採用され、社長代行に就任。ところが2011年8月の臨時株主総会では社長昇格が見送られ、田邊氏の社長続投と会長兼務が決定された。
2回目の公募は2014年2月から行なわれた。〈社長候補求む!〉というコピーの新聞広告を掲載し、1回目は3500万円だった新社長の「最低保証年収」を1億円に引き上げた。
しかし、最初の公募の顛末が影響したのか、応募者は約10分の1に減少。公募は同年8月に打ち切られた。田邊氏は公募がうまくいかなかったことについてこう振り返る。
「結局、社長が務まるような人材が来なかったということです。世の中には社長をできる能力のある人は非常に少ない」
公募は諦め、「社内の人材から社長候補を育成するのも無理」との考えから、今は取引先の銀行などを頼って候補者を探している最中だという。
「三菱(東京UFJ)さんだとか三井(住友)さんだとかに頼んで、社長候補を出してほしいとお願いしています。銀行さんのほうは『喜んでやらせていただきます』といってくれていますが、なかなか人材がいないらしいんです。だから後継候補を採用する予定は立っていません」
※週刊ポスト2015年7月10日号