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女子サッカー選手 男子と比べてその待遇が低すぎる現状もあり

なでしこ第一人者の澤でも男子選手とは格差が

 7月6日、女子サッカーW杯(カナダ)2連覇を目指し、ライバル・米国との決勝戦に臨み、敗れたなでしこジャパン。最後のホイッスルが鳴るまで、諦めることなく勝利への執念を見せたなでしこジャパンに多くのファンは「あなたたちはよくがんばった!」と胸の内で健闘をたたえた。それでも、試合後、主将・宮間あや選手(30才)は、涙を流しながらこう謝罪の言葉を述べた。

「優勝と準優勝は違うので、本当に申し訳ない」

 この言葉こそが、なでしこジャパンの魅力であり、強さの秘密なのかもしれない。そんな彼女たちの「不屈の精神」が作られた背景には、恵まれぬ環境があった。

 2011年の前回大会でW杯初優勝を飾ると、日本中に空前の「なでしこブーム」が巻き起こった。

 特に澤穂希選手(36才)や川澄奈穂美選手(29才)といったW杯で大ブレークを果たした人気選手を数多く擁するINAC神戸の試合のスタンドは一変した。

「W杯前の試合では400人程度しか観客が入っていなかったんですが、W杯後の宮間選手が所属する岡山湯郷との試合では、なでしこジャパンメンバー同士の戦いをひと目見ようと、約50倍の2万人を超える観客がスタジアムに足を運びました」(女子サッカー関係者)

 なでしこリーグ全体でも、W杯優勝前年の2010年は約8万人だった観客動員が、優勝した2011年には2.5倍の約20万人にまで増えた。

 だが、そのブームは次第に下火になっていく。

「日本サッカー協会が、なでしこジャパン強化のために、海外でプレーする選手への資金のバックアップを始めると、大野(忍、31才)、熊谷(紗希、24才)、岩渕(真奈、22才)といった人気選手が次々と海外へ移籍したため、観客動員がW杯優勝前へと戻ってしまったんです」(前出・女子サッカー関係者)

 実際、2014年のスポーツマーケティング基礎調査によれば、なでしこジャパンのファンは2012年の4074万人から2124万人に半減したという結果も出ている。

 選手の待遇に関しても、W杯優勝の恩恵を受けたのは、澤ら一部のスター選手だけで、多くの選手には影響はなかったという。

「なでしこリーグでも、プロ契約を結んでいるのは日本代表クラスの選手だけ。ほとんどがアマチュア選手で、コンビニのバイトなど、別の仕事と掛け持ちしながら、サッカーを続けている状況なんです。またプロ契約選手でも年収は200万~300万円程度で、なでしこの第一人者の澤ですら600万円ほどといわれています。億単位のお金を稼ぐ男子とは待遇に歴然たる差があるんですよ」(前出・女子サッカー関係者)

 今回のW杯準優勝メンバーの中にも、働きながらサッカーをする選手は少なくない。決勝トーナメント1回戦のオランダ戦で先制ゴールを決めた有吉佐織選手(27才)は、普段はサッカースクール『クーパー・コーチング・スクール』で受付事務として勤務。電話対応や予約サイトの管理などの仕事を担当している。

 ディフェンスの要・岩清水梓選手(28才)は所属チームである日テレ・ベレーザとプロ契約を結んでいるものの、同クラブのフロント業務にも携わり、電話対応やパソコン作業に励み、サッカースクールの現場にも立っている。

 またオランダ戦で決勝点を挙げた阪口夢穂選手(27才)も岩清水同様、ベレーザに所属しながら、クラブで仕事もしている。他にも川村優理選手(26才)は小売チェーン店『やまや』勤務、北原佳奈選手(26才)は新潟市内の産婦人科で受付として勤務、また菅澤優衣香選手(24才)と山根恵里奈選手(24才)は三井住友海上でOLとして働いている。

 世界の舞台で大活躍する選手たちでも、サッカー浸けの生活を送ることができないのが女子サッカーの現状なのだ。

 さらに海外移籍についても、男子とは少々意味合いが変わってくる。

「男子選手の海外移籍は、自身のレベルアップが目的なのはもちろんですが、かつて香川真司が所属したマンチェスターユナイテッドのようなビッグクラブに入団すれば、億単位の給料を手にすることができるんです。

 しかし、女子選手の場合は、年俸は国内とほとんど変わりません。ただ、海外でプレーすれば、協会から1日1万円が支給されますから、250万円程度の収入アップが見込めますね。ですから彼女たちは純粋に実力向上を目指して海外に挑戦しているんです」(前出・女子サッカー関係者)

※女性セブン2015年7月23日号

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