実はこの上下関係を撤廃したのは西谷浩一監督(45)だったという。大阪桐蔭もPLと同じく野球部は全寮制だが、コーチ時代の西谷監督は、当時の強豪野球部ならどこでも当たり前だった下級生が上級生の世話をする習慣を廃止。新入生は上級生の服の洗濯など、雑用から解放された。このため均等に練習機会が与えられることになったという指摘がある。
先輩・後輩の垣根がなくなったメリットは他にもあった。大阪桐蔭のグラウンドには、毎オフにOBが訪れ練習を行なう。特に実家が近い中村剛也(西武=2000年卒業)は毎年のオフに、ここでバットを振るようになった。西谷監督はいう。
「それが子供たちには大きかった。やはり励みになりますからね。しかも、高級車に乗って帰ってきたりすると、プロに行けばという夢も広がる。僕にとっては同じ教え子ですが、子供たちにとってはテレビの中の憧れの人。実際の練習ぶりを見れば、自分たちの物差しにもなるでしょうし」
大阪桐蔭に入学してきた中田は、その冬に母校で練習する「おかわり君」のバットスイングの速さに仰天して、さらに振り込むことを自らに課した。
「中田は夜中の2時まで素振りをしていたといいます。それに2年上の先輩には平田(良介、中日=2006年卒業)がいて、甲子園で1試合3ホームランを含む通算70本塁打を打ってもいた。身近な先輩が打つのは、プロを目指す強烈な刺激になったに違いありません」(在阪スポーツ紙記者)
※週刊ポスト2015年8月7日号