天候やグラウンドコンディションによっても作戦は変わります。水はけのよい甲子園でも雨で足場が悪いと、前に走り込む野手は尻もちをつきやすい。特に体重がある選手が走ると足を取られる。だから相手チームの選手の体型を見ながらバント、バスター、スクイズを絡めたバント攻撃を仕掛けていました。
ただバントをやらせすぎると野球が小さくなるので、次の試合では自由にノビノビと打たせるということもやった。その時は自分たちの前にやっている試合の結果を気にしていました。基本的に甲子園は湿度が高いが、前の試合で本塁打が出ていると「今は空気が乾いていてボールが飛びやすいな」と判断する。そんなケースではスクイズではなく、外野への犠牲フライを狙わせました。
高校野球の監督は選手にハートを入れるのが仕事。いい監督は選手の持ち味を生かして、最高の働きができるように試合で使ってやることができる。私はそう心がけて「甲子園の魔物」と戦ってきたつもりです。
●木内幸男(きうち・ゆきお):1931年、茨城県生まれ。取手二、常総学院の監督を歴任し、春7回(うち優勝1回、準優勝1回)、夏15回(うち優勝2回、準優勝1回)、甲子園に導く。
※週刊ポスト2015年8月14日号