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自営業者の国民年金 40年納付でも生活保護世帯の平均額以下

 中高年の多くは老後にかかるおカネを計算するものだが、その収支はちょっとしたマイナス因子によって、一気に負のスパイラルに突入する危険をはらんでいる。都内に住む元自営業者の男性(71歳)はいう。

「年金は国民年金だけで、昔蓄えた預金を切り崩して生活している。それも底をつきかけているが、なんとか生き延びているという感じだね。みんな気楽に生活保護をもらえばいいというが、すべてを失って生活保護を受けるのは気持ちの上では大変。世間体を考えて、そこまで勇気がないというのが正直なところだよね。でも、それもカウントダウンに入っているかもな」

 自営業者には定年がないという理由から、国民年金は保険料も支給額も低く設計され、仮に40年間納付したとしても、支給額は月6万5000円にしかならない。夫婦二人で13万円だ。国民年金の場合、満額支給でも、生活保護世帯の平均支給額19万円よりも少ないのである。貯金がなければとても生活できないが、蓄えは切り崩していけばいつかなくなる。地方都市に住む元製造会社社員の男性(73歳)も不安を口にする。

「3年前に家内を亡くし、ひとり暮らしをしています。子供はいません。最近、よく思うのは、なんでこんなに長生きしちゃうのかなということばかり。年金以外に、退職金を分割して年金方式でもらっていて、15年受け取りで年130万円になるが、それがあと数年でなくなると思うと不安で仕方がない」

 昔はお金が尽きて生活が破綻する前に寿命がやってきたが、いまは想定外の長寿命社会である。走っている最中に、マラソンのゴールが42.2キロ地点から50キロ、60キロとどんどん遠ざかっているような状態だ。ゴールにたどり着く前に、そんな長丁場を想定していなかったランナーが次々脱落しているのである。さらに厄介なことに、そうした状況はこれからいっそう深刻化する。

『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)著者の藤田孝典氏は、こう警告する。

「下流老人は現在600万人以上いると推定されますが、今後さらに増え続けると考えられます。いまや高齢者の9割が、病気や離婚など、ちょっとしたきっかけで下流老人に転落する危険にさらされている。平均的な給与所得者やホワイトカラーも例外ではありません」

 下流老人1000万人時代はすぐ目の前まで来ている。よほどの資産家でもなければ、下流老人の問題は決して他人事ではないのだ。

※週刊ポスト2015年9月4日号

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