「もちろん、デザイン性や品質を追求した高価格帯の商品を否定するつもりはなく、むしろユニクロの新しい挑戦として期待しています。
ただ、時代はアベノミクスによるミニバブル的な景気の雲行きが怪しくなり、国民の生活防衛意識が高まっています。デフレ脱却のシナリオも崩れかけている状況下では、質の良い定番商品を低価格で売り続ける“メリハリ”が大事になってくる。
ユニクロが得意としてきた価値創造は、消費者が定番だと思ってきた商品の中にも、とんでもない実用性や機能を加えたことにあります。それがフリースでありヒートテックでした。そうしたコストパフォーマンスの高さは貫かなければ市場を見誤ることになるでしょう」(月泉氏)
最後に、ユニクロが強化するネット通販の展望について。現在、セブン&アイ・ホールディングスと業務提携する方向で協議が進められている模様で、ゆくゆくはネット通販で購入したユニクロ商品を全国のセブンイレブンでも受け取れる体制を整えたい考えだ。
「柳井さん(正氏・ファストリ会長兼社長)は15年以上も前から『日本で育ったジャパニーズコンビニが世界を席巻する。ユニクロの商品も最終的にはコンビニでも売りたい』と話していました。
ユニクロの国内店舗は840店まで拡大して今後の出店余地は限られていますし、いまやスマホの小さな画面を見ながら洋服を購入することに何の抵抗もない若者が増えています。そう考えると実店舗とネットを融合させた“オムニチャネル戦略”は成功すれば大きな成果となるはずです」(同前)
2015年8月期の決算で1兆6500億円、2020年には5兆円規模の売上高を目指すファーストリテイリング。再びユニクロを成長軌道に乗せることができるか、まさに正念場を迎えている。