ビジネス

就活時期繰り下げ あえて「やって良かった点」を考えてみた

 2016年度の就職活動から、就活時期の繰り下げが行われた。ルールを遵守していない企業や「オワハラ」など問題も指摘されているが、ダメなことばかりなのだろうか。千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏が、就活時期が繰り下げられてあえて「良かった点」を考える。

 * * *
 2016年度採用はなんと言っても「就活時期繰り下げ」が話題です。新聞各社は、特集を組み検証を行っています。中でも、日本経済新聞は8月24日から5回にわたり2面の「迫真」というコラムでこの問題を追いました。

 日経の他にも新聞各紙は学生も企業も混乱したこと、ルールに法的拘束力がなく実際は前倒しで内定(に近い打診を含む)が出ていたこと、インターンシップが就活の一部と化している上に8月1日の選考解禁まで内定が出ないが故にむしろ一部の学生にとっては長期化したこと、「オワハラ(就活終わらせろハラスメント)が横行したこと、内定者にほとんど逃げられてしまった企業があったことなどを伝えています。「なんのための就活時期繰り下げだったのか」という論調です。

 私もそう思いますが、この取り上げ方もまた「紋切型」だと考えます。そもそも、就活の時期の早期化・長期化について問題提起をしていたのは新聞各紙です。いや、この件については私も問題提起していました(もっとも、就活時期繰り下げだけでは問題は解決されていないことにもふれていましたが)。単に「それ見たことか」という振り返りはナンセンスだと思います。これは実験だと捉えたいのです。そのため、今回は「就活時期繰り下げ」の「功罪」について、「功」の部分を振り返ってみたいと思います。

「就活時期繰り下げ」がもたらした「功」の部分は、次の点だと思います。

1.採用手法の多様化が促された

2.学生の間でワークルールに関する意識が高まった

3.時期に関するルールは破られることが証明された

 この3点です。順に説明します。

1.採用手法の多様化が促された

 「就活時期」の繰り下げにより、採用広報活動が大学3年生の3月(2015年度までは12月)に、選考活動が大学4年生の8月に(同4月)繰り下げになりました。

 報道の通り、申し合わせを破り早く内定を出す企業は存在しました。ただ、経団連に所属しているクラスの大手企業においては学生に採用する意向を示したりはするものの、正式に内定を出すのは8月1日以降という企業が目立ちました。その間、学生を囲い込まなくてはなりません。そのために、リクルーターなどによる接触、囲い込みが行われました。学生にとっては、何度も呼び出されて迷惑ではあります。ただ、企業と学生の肌合わせが行われ、疑問の解消や、その企業の組織風土とマッチするかどうかを確認することができたのもまた事実です。

 他にも流行ったのは「面談会」です。「面接」という言い方ができないので「面談」と呼ぶわけですが、これは選考を兼ねたものもあれば、文字通りざっくばらんに交流する面談会も存在し、やはり肌合わせを行うことができました。

 また、学内での企業説明会、OB・OGとの交流会など、大学の中に入り込んだ企画が流行ったのも今年の特徴です。

 結果として、就職ナビに過度に依存した就活から、学生と社員が肌合わせを行い、確かめ合う採用に回帰したうえ、ずるいやり方も含め創意工夫が行われたのもまた事実です。もちろん、前述したようにこれは学生にとって負荷のかかるもの、不透明なものではありましたが。

2.学生にワークルールの意識が醸成された

 ワークルールとは、労働法など仕事に関わるルールのことです。近年、ブラック企業問題が話題となり、それから身を守るために注目されました。

 今回の就活時期の繰り下げは「オワハラ」問題が誘発されました。他社を受けないように脅したり、妨害する行為です。文科省が7月に行い発表した調査では、約7割の学校において、学生からオワハラの相談があったことが明らかになりました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
《訃報》「生きづらさ感じる人に寄り添う」遠野なぎこさんが逝去、フリー転向で語っていた“病のリアルを伝えたい”真摯な思い
NEWSポストセブン
なぜ蓮舫氏は東京から再出馬しなかったのか
蓮舫氏の参院選「比例」出馬の背景に“女の戦い”か 東京選挙区・立民の塩村文夏氏は「お世話になっている。蓮舫さんに返ってきてほしい」
NEWSポストセブン
泉房穂氏(左)が「潜水艦作戦」をするのは立花孝志候補を避けるため?
参院選・泉房穂氏が異例の「潜水艦作戦」 NHK党・立花孝志氏の批判かわす狙い? 陣営スタッフは「違います」と回答「予定は事務所も完全に把握していない」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《真美子さんの艶やかな黒髪》レッドカーペット直前にヘアサロンで見せていた「モデルとしての表情」鏡を真剣に見つめて…【大谷翔平と手を繋いで登壇】
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と浜辺美波のアツアツデート現場》「安く見積もっても5万円」「食べログ予約もできる」高級鉄板焼き屋で“丸ごと貸し切りディナー”
NEWSポストセブン
誕生日を迎えた大谷翔平と子連れ観戦する真美子夫人(写真左/AFLO、写真右/時事通信フォト)
《家族の応援が何よりのプレゼント》大谷翔平のバースデー登板を真美子夫人が子連れ観戦、試合後は即帰宅せず球場で家族水入らずの時間を満喫
女性セブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と全身黒のリンクコーデデート》浜辺美波、プライベートで見せていた“ダル着私服のギャップ”「2万7500円のジャージ風ジャケット、足元はリカバリーサンダル」
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落の原因は》「なぜスイッチをオフにした?」調査報告書で明かされた事故直前の“パイロットの会話”と機長が抱えていた“精神衛生上の問題”【260名が死亡】
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《タクシーで自宅マンションへ》永瀬廉と浜辺美波“ノーマスク”で見えた信頼感「追いかけたい」「知性を感じたい」…合致する恋愛観
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン