これが盛んに報道されたことにより、対抗するべく職業選択の自由を主張すること、上手くやりくりすることがむしろ推進されたと私は見ています。みんなが泣き寝入りしたわけではありません。
「オワハラ」問題は、犯人探し、レッテル貼りがやや過剰に行われたとも言えますが、学生の間にワークルールに関する意識が高まるという点には貢献したといえるでしょう。
3.時期に関するルールは破られることが証明された
実はこれも、大きな「功」だといえるのではないでしょうか。日本の就活の歴史は時期論争の歴史です。1920年代から就活時期は何度も議論され、見直され、しかしルールは破られてきました。今回もそうなったことは明らかです。
だから「それ見たことか」と言うつもりはありませんし、「法的拘束力を持たせる」という方向にするのも違うと思います。大学で一生懸命学んでもらい、成長しきった後で採用するのが正しいと、タテマエでは言われつつも、結局、企業は学生の素質、可能性にかけているのであって、結局、他社よりも早く動こうとするわけです。ただ、だからといって他社よりずっと早く動いても、ひっくり返される可能性があることも再確認されたといえるでしょう。
今後も時期論争は続くでしょうが、時期「だけ」の論争は無意味で、今後は出会い方、選び方をどうするかという議論が盛り上がることを期待しています。
というわけで、長年、就活の早期化・長期化を問題視していたマスコミが、いざ就活時期を変更すると、「それみたことか」と論じることにも、違和感を覚えるわけです。私も就活時期繰り下げの問題は、この連載でずっと指摘してきましたが、「それみたことか」というのではなく、もたらされた変化もまた直視すべきだと思うわけです。
2016年度就活・採用戦線を終えた学生と企業の皆さんは歴史の証人です。何が起こったのかをできるだけ具体的に伝えるとともに、タテマエの議論ではなく、本音の議論を始めませんか。