国内

防犯の新常識「知らない人についていくな」で危険招くことも

 深夜の町をあてもなく歩いていた中学生の少年と少女、役者になるという夢を描きながら東京でひとり暮らしをしていた女性…相次いで起こった殺人事件は決して他人事とは思えない。あなたの大切な子供、孫を守るために今からできる「新防犯の心得」とは。

 決して他人事ではない危険から大切な子供を守るには、いったいどうすればいいのか。誰もが知りたいそんな疑問に答えてくれたのは、東京未来大学こども心理学部教授で犯罪心理学者の出口保行さんだ。これまで約1万人の犯罪者の心理分析をしてきた経験に基づき、防犯の常識を覆す術を教えてくれた。

 新常識【1】「どうすれば安全か」という考えを捨てる

 まず、出口さんは「“どうしたら”と考えること自体がそもそも間違い」と指摘する。

「こうすれば犯罪から身を守れるという、ハウツーなんて呑気なことをいっていてはいけません。対策するにはまず、今の犯罪状況に関する自分の知識が正しいかを確認し、どういうときに狙われているのか、どういう犯罪が多いのかといった地域の犯罪の特徴を知ること。情報が間違っていたら間違えた対策をしてしまうのです」(出口さん、以下「」内同)

 新常識【2】「夕方の公園」より「午後3時の道端」

 例えば、「薄暗くなってきた夕方や夜が危ない」と、子供に言って聞かせていないだろうか。

「子供への犯罪といえば、夕方の公園で小さい子が狙われると誤解している人が多いです。しかし実際は、午後3時台の道端で7才が狙われることが多い。つまり、“下校時間の午後3時に小学1年生”が狙われています。

 でも親は子供に〝夕方の公園は危ないから早く帰ってきなさい〟と言ってしまう。地域の防犯ボランティアも、夕方の公園に腕章をつけて見守りに行く。すると、犯罪者にすればチャンス。逆に、見守り隊がいない昼間に犯行しやすくなります」

 誰もが危険だと思っている時間の裏をかくことが、犯罪者に“この地域は隙がない”というメッセージが伝わり、犯罪防止につながる。

 新常識【3】「人が少ない裏道」ではなく「人が多い大通り」

 間違えて認識していることは他にもある。“人通りが多いほうが安全”という思いこみもその1つだ。

「人通りが多いところでも連れ去りは起きています。“人通りが少ないところは危ない”と思い込んでいると、人通りが多いところでは安心してしまう。犯罪者は人が多かろうが少なかろうが、相手が油断しているときを狙います。緊張して隙がない人を狙うことはありません」

 大通り沿いの、人が多いところに車が停まっていても不思議に思わないけれど、誰もいないところに停まっていたら大人も緊張する。

「大通りでガードレールがない場所だと、人に気づかれずに、道路に停めた車の中に子供や女性を引っ張りこめてしまう。ここは大丈夫、危ないという勝手な思い込みこそが危険ということがあります」

 新常識【4】危ないのは「知らない人」だけではない

 そして、口癖のように言い聞かせてしまうのは、“知らない人についていってはいけません”。この言葉も、「逆に危険を招くこともある」と出口さんは言う。

「『知らない人についていくな』の裏返しは、“知っている人なら大丈夫”です。犯罪を起こす人間は、それを知っている。だから、公園で入念におしゃべりします。すると、 “知らない人”ではなく、ちゃんとおしゃべりしてくれる“知ってるおじさん”になってしまう。話をしていても何も変なことをされなかったら、子供は安心する。そして顔見知りになってから犯行に及ぶ。帰りがけによく寄るコンビニの店員さんなど、大人でも何度か話したことがあると安心して、つい気を許してしまいますよね」

 犯罪者は裏の裏をかいてくるから、防犯は“いたちごっこ”。心理戦、知能戦となる。

※女性セブン2015年9月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン