──そのとき出演されたテレビの『タモリ倶楽部』では、嶺脇社長の特集で30分出ずっぱりでしたね。タモリさんの前で、アイドルオタクをはっきり告白されていた(笑い)。
嶺脇:あれがきっかけで、そのあと色々なメディアに出させてもらっているんですけど……なんだろうな、露出するなら、顔が見えた方がいいのかなという気がするんです。
今はSNSで個と個がつながって、「この本おもしろかったよ」「この音楽よかったよ」ってオススメされたものを買ったりするのが普通じゃないですか。だからタワーレコードという企業がこれを推しているというより、タワーの社長がとか、タワーの誰それがとか、もっと個人が情報発信した方が受け入れられる。
というより、売っている人間の顔が見えて、「この人がおもしろがってるんだ」というのがわかると、よりお客様との信頼関係が増すのではと思います。
例えば、近所にBABYMETAL(※注2)好きの店長が経営するCDショップがあって、店先に手作りの豪華なポップが飾ってあったとしたら──そこでCDを買いたくなっちゃうじゃないですか。好きなものは好きな人から、好きなところで気持ち良く買いたいっていう感覚があると思うんです。そうしたことは、Amazonには絶対できないことだと思います。もちろん顔を出すことで嫌われるリスクもあるんですけど……。
【※注2/女子高校生3人組のアイドル。ヘビーメタルとダンスが融合したパフォーマンスを行なう。今年2度目の世界ツアーを行なった】
──渋谷店をただのCDショップではなくて、「丸ごとおもしろランド」にしたり、嶺脇社長自らタワーレコードの「顔」となってメディアに進出したり、ネットとは違う、小売業ならではの、付加価値をつけた。効果はどうでしたか。
嶺脇:おかげさまで売り上げが伸びたんですよ。渋谷店は集客でいうと前年比10%増ぐらい。翌2013年、2014年も集客が結構伸びましたし、売り上げもそれなりに伸びています。10%とまではいきませんが、いい月では5%は伸びた。
CD不況と言われるこの時代に、前年に比べて売り上げを伸ばすというのは本当にむずかしい。その中で、僕たちのやり方は一つの正解だったのかなと思っています。
◆聞き手/杉山隆男(作家)
※週刊ポスト2015年9月18日号