国内

五輪エンブレム 1964年大会のものは使用できないと組織委

 トラブル続きの2020年東京五輪。エンブレム問題は1.7億円超の税金が消えていったといわれている。

 今回の一件は、「取り下げました」のひと言ですむ話ではない。新国立競技場の「やり直し」に続いて、日本に対する国際的信用を失墜させたことはもちろん、税金の無駄遣いは決して見逃せない。

 舛添要一東京都知事(66才)は、1枚91円の紙袋など、エンブレム入りのグッズを「もったいないので、使えるものは使う」と力説していたが、あっという間に「使用中止」を表明した。

 「エンブレム撤回」による損失は東京都だけでも1億円以上にのぼると報じられている。 実際に都庁に事実関係を聞いてみた。

「のぼりやポスターはすでに約4600万円分を発注ずみですが、どのくらいまで負担額を減らせるか、各業者と交渉する予定です。また、7月24日に東京都庁で行われたエンブレム発表イベントの費用は、7000万円を上限に負担する約束になっています。

“1億円以上”という報道は、これらの数字を合わせたものでしょう。都庁の職員はすでにエンブレム入りの名刺を使い始めていますが、都庁内のプリンターを使っているので、そんなに大量には刷っていません」(東京都庁職員)

 そう言って担当者は「都庁内のプリンター」ということを何度も繰り返した。ある区の職員が絶対匿名を条件にこう漏らす。

「うちの区ではエンブレムが決まってすぐに名刺の印刷が検討され、オリンピック担当やスポーツ振興の部署ではすでに刷り上がり、一部では使用も始まっていました。大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は会見で『税金で賄われているものはありません』ときっぱり発言していましたが、そんなわけないですよね。全市区町村で撤回による損失を細かく精査すれば、決して安い金額では収まりませんよ。すべて計上していけば、それこそ、数億円ということだってない話じゃない」

 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、商標調査や登録申請に伴う経費、応募用ホームページの制作費などで約5700万円の損失があったといわれており、これまでに約1億7000万円以上がパーになったと報じられている。さらに、新エンブレムの公募や審査でさらなる費用がかさむのは明白。私たちの巨額の血税が使われるというのに、騒動の経緯は説明されないし、どれほどの税金がどのように使われたのか、今後いくら使われようとしているのか明細が公開されることは期待できない。

 そんな中、東京都は新しいエンブレムが決まるまでの間、招致活動の際に使用した「桜のリース」モチーフのエンブレムを使うこととした。これが大好評で、「五輪エンブレムもこれでいいんじゃないの」という意見が上がっている。しかし、大会組織委員会は、そうできないことを明らかにした。

「理由として、国際オリンピック委員会(IOC)の指針に“大会エンブレムは招致ロゴに取って代わるもので、発表まで機密事項として管理すること”とあるからだと説明しました。また“招致エンブレムは無償で多く配布されているから、今さら有償で(権利ビジネスの)ライセンス展開するのは難しい”とも話しています」(全国紙記者)

 これにはインターネット上に《平たく言えば金のためですね》《完全に大人の事情ってやつだなぁ》《これじゃオープンな選考とか無理じゃん》などと非難の声が殺到している。

 一方で、歌手の椎名林檎(36才)や漫画家のやくみつるさん(56才)らが提唱している「1964年のマークの再利用案」も注目されている。やくさんは、

「明快で荘厳。あれを超えるデザインはない。2度目の五輪開催都市として、先人への尊崇の念を持ち、理念を継承していくことが大切ではないか」(9月2日付朝日新聞)

 税金の無駄遣いがぐっと少なくなることもあり、日本中から賛同の声が聞こえてくる。 しかしこの件に関して大会組織委員会に問い合わせると、書面で以下のような内容が送られてきた。

「大会エンブレムは組織委員会自ら作成することが必要です。商標の観点で赤い日の丸のものは明確な区別が難しく、商標登録ができない可能性がきわめて高いので、1964年の大会エンブレムを今大会のエンブレムとしては使用できないと認識しています。IOCも東京2020組織委員会からの新しいデザインの提案を待っています」

※女性セブン2015年9月24日号

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン