これまで世界的な低金利が続くなか、債券主体で運用する国内外の債券ファンドマネージャーは、金利だけではパフォーマンスを上げられなくなり、債券に類似するような高配当で値動きの小さい株式に目を向けるようになった。自分たちの主戦場ではない株式市場にこぞって参戦してきたのだ。
このような価格変動リスクを抑える投資手法を「最小分散投資」というが、それによって世界中で食品や薬品といった、いわゆるディフェンシブ銘柄に買いが集中。彼らの資金量は株式ファンドをはるかに上回るため、国内ではそれまで目立った値動きのなかったエーザイやアステラス製薬などの薬品株、JTやキッコーマンなどの食品株が大きく上昇した。特に今年前半は、とてもディフェンシブとはいえないほど派手な値動きを見せてきた。
問題は、ここから先である。本来、債券市場を主戦場にしてきた彼らは、金利が上昇すれば債券に回帰して、最小分散投資から手を引く可能性が高い。そのきっかけとなるのが、米国の利上げにほかならない。米国の金利が上昇してくれば、全世界の債券ファンドマネージャーがこれまでさんざん買い上げてきたディフェンシブ銘柄を投げ売りし、暴落の恐れすら出てくるのである。
すでにその兆候は6月くらいから見え始めており、いざ米利上げが実施されれば、一気に株価が急落する可能性もあるので、くれぐれも注意しておきたい。
※マネーポスト2015年秋号