ここまでくると、スメハラ対策はキリがなく、どこまでが許容範囲なのか分からなくなってくる。社会保険労務士の稲毛由佳さんは、「職場のコミュニケーション不足が事を大きくしている」と話す。

「他人のニオイが気になって仕事が手につかないほど職場環境を著しく悪化させる場合に、何らかのスメハラ対策を考える必要があります。

 ただ、いくら好みの問題とはいえ、労働者一人ひとりの気配りや努力、そして他人(会社)任せにせずに『嫌なことは嫌だ』と現場レベルでコミュニケーションしない限り、快適な職場環境は望めません。我慢を重ねた結果、よけいに注意の仕方がきつくなって相手を傷つけてしまうケースも多いのです」

 とはいえ、食事や香水など生活習慣の見直しで軽減できる不快臭ならまだ伝えやすいが、体質問題にかかわるニオイを注意するのは気が引けるという人は多いだろう。それは会社側に頼っても同じだという。

「組織としても当人同士で解決してほしいというのが本音です。なぜなら、苦情を申し立てた人の肩を持って、指導や席替え、配置転換といった対処をすると、逆に苦情を申し立てられた人から不当な扱いとして訴えられるリスクもあるからです。

 まずは、“無臭”を目指すのが職場でのビジネスマナーだという共通認識を持つことがスメハラ対策の第一歩。そうすれば、体臭ケアを心がけてデオドラント商品を勧め合うこともできるでしょうし、香水や柔軟剤などのニオイが、かえって周囲の迷惑となっていることも理解できるはずです」(稲毛さん)

 誰もがスメハラの“加害者”になり得るほど、ニオイに敏感な時代。「自分は無関係」だと思い込むのが一番危険だ。

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