たとえば、日本で発注したら3000万円以上かかるシステム設計は、フィリピンの人材に委託すると70万円でお釣りがくる。40倍以上の人件費の差がクラウドソーシングによって克服できるわけで、いまやブルーカラーよりもホワイトカラーのほうが国境を越えやすい時代になったのである。

 さらには事業資金も、良いアイデアであればクラウドファンディングによって不特定多数の人たちから容易に調達できる。実際、スマートウォッチのベンチャー企業「ペブルタイム(PeBBle Time)」は、クラウドファンディングサイトである「キックスターター(KiCkstArter)」で2000万ドル(約25億円)もの資金を集めた。

 このため、いまアメリカの大手ベンチャーキャピタルは、新たな投資機会が見つからなくて困っている。彼らの元には数千億円のカネが集まっているため、100億円単位の投資先を求めている。ところが、有望なベンチャー企業を輩出するシリコンバレーでは、ペブルタイムのようにクラウドファンディングで資金を集めるケースが増えているからだ。

 そのうえ、ローコストに事業が進められるクラウドコンピューティングやクラウドソーシングの発達によって「サブミリオン」と呼ばれる、100万ドル(約1億2500万円)未満の資金でスタートして2~3年で急成長する企業が多くなった。事業に多額の資金を用意する必要がなくなったのである。

 20世紀の経営の三要素は「ヒト・モノ・カネ」と言われたが、いまやそれが三つのクラウドで代替できるようになり、すべて自前で持つ必要がなくなったと言っても過言ではない。21世紀の経営資源は、新しい事業環境が見えていて良いアイデアを生み出せる一握りの傑出した人間だけでよいのである。

 言い換えれば、三つのクラウドを理解しているかいないかで、見える景色は全く違う。三つのクラウド時代の景色が見えている人にとっては、これほど事業機会があふれている時代はない。実際、そうした人たちに聞くと、少し考えただけでも、新しい事業アイデアが10も20も簡単に出てくると言う。

※SAPIO2015年10月号

関連記事

トピックス

俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン