PCスキルは必要あるのかと疑う学生たちだが、就職活動を始める時期から必要に迫られ所有率が上がると神奈川大学非常勤講師で情報処理の授業を担当する尾子洋一郎さんは言う。

「新入学生にPC所有状況をきくと家族と共用が多いですね。使う機会が少ないからでしょう、中学や高校の『情報』でも教わったはずのワードやエクセルの使い方を覚えていない学生が少なからずいます。PCメールの使い方も一から教えています。それでも、学部3年になると就職活動用にPC購入相談が増えます。『3万円でワードやエクセルも使えるPCを購入したい』と相談されたときは、ネットストアのバーゲンセールを一緒に探しました」

 前出の舞田さんも尾子さんも、学生のPCスキルが低いのは、使わざるをえない場面が少なすぎるからだ、とそろって言う。

「入学祝でPCを買ってもらったのに、必要なときがないからスマホばかりという学生が少なくないです。受験とは関係ない科目かもしれませんが中学や高校の『情報』でもっとしっかり教えて、早くからPCスキルを活用させて慣れさせてほしい。PCについては習うより慣れろという側面が強いので」(前出・尾子さん)

「動画編集はできるのにエクセルの棒グラフが作れない学生がいるのは、必要に迫られないから。レポートはスマホで書けるとPCを使わない学生もいます。でも、グラフや図を適切に挿入するにはスマホだけでは無理です。コピペ防止に役立つからとレポートを手書きで提出させる授業が少なくない大学側の対応も、学生のPCスキルが低い原因のひとつでしょう」(前出・舞田さん)

 デジタル・ディバイドといえば、かつては世代によって生じる情報格差だった。ところが最近では、世代に関わりなくスキルによって格差が生じつつある。

「日本は教育のICT化が大きく遅れています。OECD調査から学習におけるPC利用頻度を調べたところ、日本は最低ランクでした。高度情報社会という事実があるのに、社会人になって初めてPCの使い方を学習するのでは遅い。大学も含め学校は、もっと若者のITリテラシー教育を担うべきです。若者にはエネルギーがあるのですから、それをよい方向に向けてやるのは大人の責任です」(前出・舞田さん)

 規律の正しさや高水準の学力を養える日本型教育を輸出しようという動きがある。しかし、ITリテラシーについては足もとを整えることが必要な状況のようだ。

関連キーワード

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン