最近台頭してきたのが「混ぜる」ことを前提としたカレーだ。もともと昔から極辛のチキンカレーと甘い野菜カレーを自分で混ぜて好みの味にして食べる『らくしゅみ』という店もあったし、行列が絶えない『ボタニカリー』などもあいがけの発展形と見ることができる。
そして、「混ぜるカレー」の決定版といえるのが、『ロッダグループ』のギャミラサセットと名付けられたワンプレートカレーだ。スリランカの家庭で食べられているスタイルだが、これこそがいまの大阪の一大潮流。メインのカレーをマトンやチキンなどから選び、その他スリランカのハーブ、野菜、ココナッツ、豆のカレー、豆せんべい・パパダンなどが皿に盛られる。これらを最初から混ぜて食べる。それぞれを味わいたい衝動も抑えきれないが、混ぜたほうが圧倒的にうまい。わざと粗めに混ぜて各パートの味の変化を楽しむのも良い。
いまでは大阪に広く浸透しているが、最初に提供したのはこの店。約4年前のことだ。最近レストランタイプの2号店もできた。こちらはまるでスリランカの居酒屋。飲みながら絶品のカレーやスリランカ料理が楽しめる。
大阪のカレーは深い。そして絶え間なく膨張する宇宙のように進化を続けている。
●文/梶原由景:LOWERCASE代表。元BEAMS・クリエイティブディレクター。ファッション業界きっての食通として知られる。グルメ情報満載のブログはファン多数。J:COMの人気番組『どやメシ紀行』をプロデュースする。著書に『TRANSIT TOKYOごはん』(講談社刊)など。
撮影■杉原照夫
※週刊ポスト2015年10月9日号