いま大阪では独自のカレー文化が花開いている。その視線は東京をはるか超え、スパイスの本場インドに、そして最近ではスリランカへと注がれている。
大阪のカレーといって思い浮かぶのは、例えば東京に進出してすでに熱心なファンを獲得している『インデアンカレー』だ。最初は甘く感じるものの、スプーンを口に運ぶごとにどんどん辛さが攻めてくる独特のソース。付け合わせも含め東京にはないスタイルを確立している。大阪駅地下街の老舗『ピッコロ』や難波『元祖とんかつカレーの店カツヤ』なども濃厚なルウが魅力的だ。
もともと大阪は洋食から発展したカレーの層がぶ厚いが、最近大阪で元気なカレーは、従来のものとはまったく異なる、独特の調合を売りにしたスパイスがゴロゴロしたカレーだ。
例えばすでにリビングレジェンドと称される『カシミール』。具になっているのは豆腐とわかめなど味噌汁かと見紛う内容。ご主人はミュージシャンというだけあってまさにカレーのインプロビゼーション(即興演奏)だ。本格的インド料理のようだがインドには決して無いカレー。このあたりから大阪のカレーが面白くなり、独自の進化を始めたように思う。
新しい大阪カレーの世界では『soma』が白眉だ。約30種類の焙煎したスパイスを使用したカレーは一口食べるとすぐ舌でハーモニーを奏で始める。チキンキーマ、トマトカレー、それにお肉のカレーと3種類のあいがけが良い。
それぞれを楽しんだ後、ちょっと混ぜてみるとまさに多重奏の風味。油を使わず肉から出る脂だけで材料を炒めているので胃がもたれることもなく身体にも優しいカレーとなっている。満腹になっているはずなのに食後に若干の空腹感を覚えてしまうから驚く。