安倍首相は今回の内閣改造・党役員人事で稲田氏を重要閣僚に起用することを検討していたが、土壇場で政調会長留任に傾いたのも、“谷垣幹事長の下で修行させる”という意味を持つというのだ。本来、タカ派の安倍首相とリベラルな谷垣氏は政治路線を異にするはずだが、禅譲説が浮上したのは、総裁選前の“連係プレー”が強く印象づけられていることが背景にある。

 谷垣氏はいち早く「(安倍首相の)無投票(再選)が望ましい」と明言し、対抗馬の出現を牽制した。

 その後、野田聖子・前総務会長の推薦人集めの動きが本格化すると、告示直前の9月4日に安倍首相は自ら党本部に出向き、谷垣氏を訪ねた。2人の間で「野田出馬阻止」が話し合われたとみられている。そこから切り崩し工作が本格化。野田氏は推薦人20人を集められず出馬を断念した。

「谷垣氏が総理に尽くすのは、次の芽があると考えているからだろう。安保国会閉会後、谷垣氏が誰よりも早く『(安保の)岸(信介)から(所得倍増計画の)池田(勇人)へ』と、経済重視を進言したのも、本音は“安保の安倍”の次は“経済の谷垣”という禅譲を期待しているからでは」(同前)

※週刊ポスト2015年10月16・23日号

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