ビジネス

VWが不正に手染めた背景 販売台数世界一達成のプレッシャー

VWが不正に手染めた背景とは

 米環境保護局(EPA)の調査で発覚した独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車不正行為は信じがたいものだった。

 米国の検査機関による排ガス試験で、VW社は違法なソフトウェアを使い、検査中だけ排ガス浄化装置をフルに作動させて規制値をクリアするしくみを組み込んでいた。公道走行時に排出される有害な窒素酸化物(NOx)は、米規制値の最大40倍にも達するという。

 この違法行為に対するVW社への制裁金は最大で180億ドル(約2兆1600億円)とされる。VW社はこれまで欧州を中心に世界中で1100万台のディーゼル車を販売してきたが、リコール対策費用として65億ユーロ(約8700億円)を特別損失に計上する。

 他にもユーザーらの集団訴訟も待ち構えていて、VW社は途方もない額の損失を出すことが確定している。

 発覚すれば会社の経営を揺るがすほどの制裁を科されることは見越せたはずで、そんなリスクを冒してまで、なぜVW社はこのような違法行為に手を染めたのか。在独ジャーナリストの熊谷徹氏はこう指摘する。

「この事件で辞任したVW社のヴィンターコルン前社長は、トヨタに追いつき追い越せで、販売台数世界一になることを至上命題にしていた。そのプレッシャーが背景にあったと考えられます」

 VW社はここ10年で企業買収を進めて急激に販売台数を伸ばし、2014年まで3年連続で世界一の座にいたトヨタを猛追。2015年上半期(1~6月)に約2万台の差でトップに躍り出た。

 しかし、7月販売分が加算されると(1~7月)、トヨタがトップを奪還するという熾烈な争いになっている。販売台数世界一はVW社にとって悲願だった。

※週刊ポスト2015年10月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト