こうなると、仕事も手につかなくなってきます。予告先発投手の戦績や、対戦チームとの過去のデータを調べるのに忙しくなってしまうからです。当初は「仕事をしながら賭けられるので便利だな」と思っていたのが、知らぬ間に中毒にかかってしまい、生活があべこべになってしまう。
私は今年の7月末で野球賭博から手を引きましたが、それまでの約1年間で、80万円ほどの損失を出してしまいました。
しかしそれは、野球賭博の中毒症状が治まったからではなく、N氏により会社のおカネを流用される事件が起きたためです。
商品は間違いなく売れているのに、待てど暮らせど売上金の入金がなく、調べてみると、N氏が私的に売上金を流用していることが分かったのです。N氏が会社のおカネを流用したのは、野球賭博の回転資金にするためだったと見て間違いないでしょう。
N氏は野球賭博の末端の胴元のようなことをしており、毎月曜日に私たちから回収したおカネを、どこか「上部」に当たる所へ送金していました。その時は非常にピリピリしており、私が振込先を間違えたせいでおカネが足りなくなってしまった時など、傍目にも分かるほど焦っていました。
私はN氏が会社のおカネを流用したのは詐欺行為に当たると考え、警察に相談しています。その際、自分の罪だけを隠すようなことはすべきでないと考え、野球賭博に手を染めてしまったことを正直に話しました。それについて責任を問われるのなら、仕方のないことだと考えていますし、自分のしたことを反省し、もう二度と野球賭博には関わらないと固く誓っています。
取材・文■李策(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2015年10月30日号