芸能

武田鉄矢 父親と母親への親孝行の仕方は違っていいと語る

親孝行について語る武田鉄矢

 2010年に出版し、ベストセラーとなった著書・『私塾・坂本竜馬』が文庫化された武田鉄矢さん(66才)。その発売を受けて、自身が家族をテーマに語るシリーズ。今回は武田さんが自らの体験と反省に基づき、上手な親子関係の築き方、親孝行の方法について語ります。

 * * *
 ぼくの両親はすでに他界しています。その体験から学んだのは、父親と母親、それぞれ親孝行の仕方が違っていい、違った方がいいということ。

「威厳がなければ父親ではない」と思う人は多いのではないでしょうか。

『女性セブン』の読者世代の父親は、もうそうであってはいけないと思うんです。正反対にかっこ悪い父親であることこそ幸せなんだと知ってほしい。

 というのも、最後まで尊敬に値する父親たろうとする男たちの晩年は、あんまり幸せじゃないような気がします。

 うちの親父は死ぬ間際まで意地を張り通して、一生懸命かっこいいところを見せようとしてた。ぼくが病院に見舞いに行っても、「おれはいい。隣の人が死にかかってるから、お前がひと声かけて、サインでもしてやれ。元気が出るから」ということばかり言っていた。そのくせ、ぼくが帰ろうとすると、博多弁で「もう帰るとか」とうっすら目の奥に涙をためてたんですね。

 本当は「もっといてほしい」「さびしい」と、親父は言いたかったかもしれない。親父は「強い父親像」を守ろうとしていて、無理したまま亡くなったんだと思います。そういう親の心を、ぼくはどこかわかっていながら、認めず放っておいた。いまだにぼくは息子として親孝行ができなかったと悔いています。

 じゃあ、何が親孝行か。ぼくは父親がさびしさや悲しさを少しでも出したときに、否定せず認めることだと思うんだ。だから、みなさんは強がっている父親の威厳をなくしてあげてください。

 一方、母親は父親と違って、決して敗者にさせてはいけない。子供が勝者であるっていうことを好まないんですよね。

 母親が亡くなる数か月前、ぼくに車を買ってあげるって言ってくれました。そのとき、お金を出させるのは忍びないから断ったんです。そしたら母親はぼくの姉たちに「鉄矢はかわい気がない」ってこぼしたそうです。

 ぼくは母に母親であることをまっとうさせてあげられなかった。 それを経験して、母親に働かせないとか、楽をさせようとかって思うと、逆に、それが母親の役を取り上げることになるんだと学びました。ずうっと子供でいること、それがいちばんの母親孝行だと思います。

 父には、敗者として認めてあげる、母親とは「今日も引き分け」だった――そんな関係が続けば、親も子も幸せなんじゃないかな。

※女性セブン2015年11月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
2週連続優勝を果たした 竹田麗央(時事通信フォト)
女子ゴルフ 初Vから連続優勝の竹田麗央(21) ダイヤモンド世代でも突出した“飛ぶのに曲がらない力”
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン