担当ディレクターは文句もいわず、TBSは続投を決めると、以前にも増して老人が中継に集うようになった。10年ほど前、番組に訪れた100歳になる小学校の元校長先生は、直筆の手紙をしたためた。
〈人に笑われるなと学校で教えてきました。でも、今日はマムちゃんにからかわれて、楽しかった。あと2年は生きようと思います〉
「その手紙を、パチンコのチラシの裏に書いてきてくれやがってね。今でも持っているけど。2年後に本当に死んじゃったよ」(同前)
ぶっきらぼうな言い草の中にも、優しさがある。放送中も、毒を吐いた後に「簡単にはくたばらないよな。頑張っているよね」などとフォローし、女性には親しみを込めて「○○ちゃん」と必ず下の名前で呼ぶ。
「心が通っていれば、かえって毒舌が良くなる。丁寧にいわれるよりも人情を感じる」(聴衆の男性)
中継現場には放送開始30分ほど前の10時ピッタリに到着し、1分でも早く着きそうだと、わざわざ迂回するようにスタッフに伝える。
「予定より早く着くと、訪問先に気を遣わせてしまうと考えているようです」(番組ディレクター)
生中継後は、放送より長い時間を取って聴衆たちと談笑するのも恒例。「ここの銭湯に来ている? 今日だけじゃなくて、また来てよ」と訪れた店への配慮も忘れていない。
「せっかく集まっているから、話をしないともったいないでしょう」(毒蝮)
サラリというが、40年以上も続けられることではない。「毒蝮に会えば元気になる」と噂が噂を呼び、いまや老人のカリスマ的存在だ。
「どうしてだよ(笑い)。最近、礼賛記事ばかりで気持ち悪いんだ。俺と握手したって幸せになるわけじゃねえ。幸せは自分でつかむもんだよ」(同前)
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2015年11月6日号