しかし、完全復活と呼べる状態になるには、まだ大きな課題が山積している。外食ジャーナリストの中村芳平氏がいう。
「マックは閉鎖店舗も含めてコストのかかる直営店の比率を下げ、現在6割以上に及ぶFC比率をさらに高めようとしています。そこで出てくるのが人材難やサービス低下の懸念です。
直営店が多かった時代のマックは、アルバイトで入った従業員が店長に昇格したり、地域統括のマネジャーになれたりと、仕事に誇りを持っている人が多かった。それが今では本部の幹部クラスでさえ度重なるリストラで人材難が顕著なうえ、FC間の店舗オペレーションもバラバラ。中には掃除や商品提供のサービスが行き届いていない店舗もあります。
マックは企業理念でもある〈QSC & V=品質・サービス・清潔さ & 付加価値〉のすべてが揃っていたからこそ勝ち続けられた企業。その根本が崩れたままでは、いくら新商品を投入しても離れた顧客はそう簡単には戻ってこないと思います」
そのことは、マック自身も認識している。
長年、地方の有力FCに出向し、現場を熟知していることから副社長兼COO(最高執行責任者)に抜擢された下平篤雄氏は、事あるごとに、〈床に落ちたポテト1本、大木と思え〉〈マック再生は、ふきんとちり取りから〉(ともに日経ビジネスオンライン)など、店舗運営の基本徹底を掲げている。
今年4月からはスマホのアプリを活用し、顧客の声をリアルタイムで吸い上げて現場に配信するシステムも稼働させた。一度失った信頼を取り戻すのは一朝一夕にはいかないだろうが、地道な改善が少しずつマック復調の足がかりになっていくはずだ。