ほとんどの人は、小児期に水ぼうそうにかかる。原因は水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスの感染で、全身に水疱(みずぶくれ)ができるが、重症化することなく2週間ほどで治る。その後、ウイルスは脊髄の知覚神経の根元に潜むが、免疫ができているため、発疹を生じるほどには増殖しない。しかし、加齢やストレス、病気などで身体全体の免疫が落ちたうえ、水痘・帯状疱疹ウイルスの免疫も低下すると発症する。
中野皮膚科クリニック(東京都中野区)の松尾光馬院長に話を聞いた。
「帯状疱疹は、暑い季節に多く、冬になると減ります。冬は水ぼうそうが多いので、感染した子供に接することで免疫が活性化し、発症が減ると考えられます。子供と年間4000時間以上接した人は、帯状疱疹が少ないというデータもあります。発症のピークは50代以上で、高齢になるにしたがい増えます。発疹が治っても痛みが長く残るなど重症化する方もいます」
帯状疱疹は、神経節で増殖したウイルスが炎症をともないながら神経をつたい皮膚へと到達する。急性期は強い痛みが起こり、何日か後に痛みのある場所に赤く盛り上がった発疹が現われ帯状に広がる。症状は身体の左右、どちらかに生じ、特に顔面の三叉神経第1枝(額)や胸腹部など体幹部での発症が多い。
急性期の治療は、抗ウイルス薬で、早めに治療を始める。早期の治療開始で、治療期間の短縮も可能だ。痛みに関しては、初期は炎症によるものなので、ステロイドや一般的な鎮痛薬で行なう。帯状疱疹は、ウイルスが神経を壊しながら進展する。神経の修復はある程度なされるが、破壊がひどい場合は元には戻らない。
洋服が触れても痛いなどと表現されるような痛みは、神経の破壊による帯状疱疹後神経痛(神経障害性疼痛)の特徴だ。60代以上では、患者の10%に3か月以上の痛みが残り、5~10年以上も強い痛みに悩まされる人もいる。