翌日、自治体の担当者(検診担当課長、保健師)と検診団体(所長、診療放射線技師)が、男性の自宅を訪問してきた。男性が約30万円の医療費について自治体に尋ねると──。

検診担当課長:自己負担していただくしかない。

保健師:私たちにも予測できないことでしたし、バリウムとの因果関係がハッキリしていません……。

 手術の担当医は、診断結果に「バリウムで大腸に孔が開いた」と、明確に記載していた。男性がその資料を示そうとしたが、検診団体所長は「専門家じゃないんで」と見ようともしない。こんな会話もあった。

男性:全国レベルでは、自分と同様のケースはありますよね?

放射線技師:私どもは日本対がん協会の福島支部でして、いろんな勉強会、研究会をやっていますが、(翌日に緊急手術の例は)聞いたことがありません。

 日本対がん協会といえば、国内最大の検診グループであり、バリウム検査を重要な収入源としている。「検診ムラ」の中心的な存在だ。

 医薬品の副作用情報を収集するPMDA(独立行政法人・医薬品医療機器総合機構)に報告されたデータを独自に集計したところ、2014年度の一年間だけで、バリウム製剤で大腸などに孔が開いた「穿孔(せんこう)」は68例もあった。

「バリウム穿孔」に関する様々な論文を確認した限りでは、検査翌日に緊急手術を行なったケースが大半だ。「検査翌日の手術例は聞いたことがない」と発言するのは、責任回避を意図しているのだろうか。

 胃がん検診で身体障害者になった男性に対し、検診関係者が誰も責任を取ろうとしていないように見える。

●文/ジャーナリスト・岩澤倫彦(『バリウム検査は危ない』著者)

※週刊ポスト2015年11月13日号

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