もう1人の男性は愛知県出身で、上海や名古屋に支店を置く人材派遣会社の役員。浙江省温州市平陽県沖の南キ島で、海洋監視船を指揮する中国海警が建設中の大型基地周辺で写真撮影をしていたところ、巡邏中の軍部隊に見とがめられ、軍事施設に侵入した現行犯で身柄を拘束された。
この基地は軍用機の滑走路やヘリポートを建設し、排水量1万t級の大型船など最大6隻が停泊可能。さらに、最新鋭のレーダーを設置するなど、尖閣諸島の周辺海域の監視強化のために設けられたものと見られる。
中国側が基地建設を公式に発表したのは6月上旬だった。しかし、男性は5月の段階で、日本人観光客がめったに訪れない島に渡って写真撮影をしていることから、特殊なルートで中国の軍事機密を知りえたと考えられる。このため、男性のバックには、中国の軍事機密を知ることができる特殊な機関がついていたとしか考えられない。
ただし、2人とも中国当局の警戒が厳しい中朝国境地帯や軍事施設周辺で不審な行動が見とがめられるなどしており、訓練を受けたプロのスパイであるとは言い難い。2人の男性は中国に長期滞在することも多いことから、公安調査庁が“スカウト”し、報酬を渡して情報取集を依頼したと考えるのが妥当だろう。
その後、男性2人だけでなく、北海道在住の60代の男性や、東京都内で日本語学校を経営する50代女性が中国内で逮捕されているとの情報が出ているが、具体的な事実は明らかではない。
※SAPIO2015年12月号