国際情報

中国 一人っ子政策の影響で無戸籍者が700万人以上存在か

 中国共産党が5中全会(党中央委員会第5回全体会議)で「一人っ子政策」の廃止を決定したことが、大きな波紋を呼んでいる。同制度は1979年、人口増加を抑制するために導入されたが、その結果、この約35年の間に中国の人口構成は大きく歪んだ。高齢化が進む一方で若者層が減り、深刻な労働力不足は経済成長の大きな弊害要因にもなっている。全国紙の北京特派員がいう。

「制度開始以降、政府は条件付きの緩和策を相次いで打ち出し、2013年には“夫婦のどちらかが一人っ子なら2人目を産んでもいい”という大幅な緩和に踏み切った。だが、対象となる夫婦は1100万組もあったのに、実際に増えた第2子はわずか47万人。結局、制度そのものを廃止するしかなくなった」

 これまで一人っ子政策を推進してきたのは、計画生育委員会という、日本の厚労省に相当する衛生部とは独立した組織だった(2013年に統合)。この強力な集団によって“2人目を産ませないこと”が利権化し、中国全土で徹底されてきた。計画生育委員会は所轄エリアの結婚適齢期の男女をチェックし、家族計画の講習などを行なってきた。

 その一方で“一人っ子宣言”をした夫婦は、学費や学校費用の免除、夫の昇進面での優遇など、さまざまな厚遇を受けることができたという。逆に、違反した人間には厳しいペナルティが科せられた。

「数年前からは収入に応じて罰金を取る形になった。地方によっては年収の6~10倍が徴収される。世界的に有名な映画監督であるチャン・イーモウは2013年に3人の子供がいることが発覚し、約1億5000万円の罰金を払ったといいます」(前出・特派員)

 農村部では跡取りとなる男の子を欲しがるため、胎児が女と判明すると中絶するケースや、生まれても戸籍に載せないケースが横行してきた。そうした無戸籍の人は“黒孩子(ヘイハイズ)”と呼ばれ、700万人以上いるといわれる。

※週刊ポスト2015年11月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン