もちろん高級外資系ホテルの看板を掲げる以上、同じグループ間でブランドイメージを統一させることは重要だが、前述したように国内の外資系ホテルは運営形態が複雑で、ブランドやチェーンの論理が容易に通用しない。
経営・運営会社とグループとの契約内容や力関係、GM(総支配人)の所属、派遣元との信頼関係などさまざまな要素が入り乱れ、多くの外資系ホテルでブランドイメージがあやふやになっているのは確かだ。
また、投資対象となっているようなホテルは、「昨日まであのブランドだったのに、今日からこのブランド?」と、同じ施設なのに看板の掛け替え(リブランド)を無節操に行うケースもある。利用者にしてみたらブランドイメージもコンセプトもあったものではない。そして、利用者以上に翻弄されるのが現場のホテルマンだ。これでは有能な人材も育たないのではないか。
マリオットがスターウッドを買収したことは大きなニュースだが、米国内の安全保障という側面も含めた中国資本による買収を阻止する狙いもあったとすれば、そこにはホテルブランディングの論理はない。
日本では2020年の東京五輪を前に、インバウンド需要を見込んだ外資系ホテルの勢力争いが一層激しくなると見込まれているが、実態を伴ったブランドを確立できるかどうかが成否を分ける大きなカギになるだろう。