さて、マイル戦について少し話します。マイルは日本人に馴染みの単位ではありませんが、競馬関係者、そしてたぶん馬もその重要性をきっとわかっています。
マイルは馬の距離適性を見る分水嶺です。マイル以下(1200メートル、1400メートル)のレースでは、スピードだけの一本調子の競馬でも勝てる。しかしマイルはスピードも必要ですが、どこかでタメを作らなければいけない。ジョッキーの指示をきちんと聞けるかどうか。ここに適性が顕われる。ヨーロッパではマイル以下の距離の競馬は重要視されません。
角居厩舎ではスピード豊かな新馬でも、まずはマイルを走らせます。長い距離をきちんと走れる馬に育てたい。結果的にマイラーに育つのもいいのですが、最初はそこが目標ではないということです。
JRAの平地GIのおよそ3分の1はマイル戦です。右回りか左回りかといった違いや、コースの特徴なども差がありますが、マイルの駆け引きの重要さという面ではあまり違いはありません。
どのコースも、ゴール前の直線が見ものです。どこでタメを作っているのか。馬がジョッキーの指示にきちんと反応しているのか。そんな視点で競馬を見ると面白いのではないでしょうか。
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号