◆経済ヤクザより武闘派が儲かる
山口組分裂の余波は、他団体にも波及している。両陣営がかつての破門者・絶縁者たちを拾い上げ、少しでも組員を獲得しようとする中、山口組から他団体の「武闘派」と呼ばれる組織に人が押し寄せているのだ。東京のとある組織は、毎日5~6人の組員志願者がやってくるという。名前を明かせば、全国の暴力団が頷くだろう有名ブランド組織である。
「自由化ってヤツだ。時代の流れだ。不満があっても死ぬまで親分に付いていくなんて言ってたら、一生冷や飯食いになる。面接ばっかで疲れるよ。ゆっくり飯を食うヒマもない。1日の最高記録は11人だな。世間話をするだけでも、使えそうなヤツは分かる。マスコミも暴排条例でヤクザが食えないとか、判で押したような報道は止めて欲しいね。人材が集まらない不景気だって調子がいい組織はある。そこにはまだ夢もある」(在京団体組長)
なぜ他団体の武闘派に人気が集まるのか。
分裂騒動で2つの山口組が疲弊していくなか、第三極に賭けたほうが勝算があると考える者は少なくない。実は「経済ヤクザ」という言葉は、喧嘩の出来ないヤクザという侮蔑のニュアンスを含んでいる。本来、金を集める誘蛾灯になるのは暴力だ。そして最終的に勝ち残った組織に金が湧く。
とある人気武闘派組織の面接会場に同席させてもらった。事務所の応接室に通されたスーツ姿の男は角刈りで、かなり緊張していた。今の仕事や家庭環境から話がはじまり、話は過去の組織の内情になった。あまり古巣を悪く言わない方がいい。愚痴を言わない方がポイントが高いらしい。
「いまさらヤクザやっても大変だろう。そんな時代じゃない。なんでカタギになれたのにわざわざ戻りたいの?」
面接官の親分が志望動機を質問する。
「燃えてみたいです。会長の下で」
どうやら合格点に達したようで、この人は食事の約束を取り付けた。六代目山口組でも、神戸側でも、連日“採用面接”が行なわれているのだろう。抗争前夜の暴力団社会に、若い衆にとっての春が訪れている。
※週刊ポスト2015年12月11日号