「認知症の約7割を占めるアルツハイマー型の原因に『アミロイドβ』という物質が深く関係していることがわかっています。アミロイドβとは“タンパク質の残骸(老廃物)”で、これが脳内に徐々に蓄積することで認知症が発現するのです」(奥村氏)
例えば、80歳で認知症を発症した人は、30年以上前の40代から脳内にアミロイドβが溜まっているのだという。そして蓄積量が増えるにつれ、その“毒性”も強まり、脳内の神経細胞を傷付け、死滅させる。
アミロイドβは、まず大脳の側頭葉にある「海馬」周辺の神経細胞を蝕んでいく。海馬とは、新しく経験した情報を記憶として脳に定着させる一時的な記憶の貯蔵庫である。物忘れが酷くなるMCIの症状が現われるのはこのためだ。
アミロイドβの他にも、MCIから認知症への移行を加速させる要因としてストレスや高血圧、メタボリック症候群(肥満)、糖尿病などが挙げられる。つまり、アミロイドβの蓄積などのリスク要因を低減させることが、MCIから認知症への進行を防ぎ、症状を改善させるポイントとなる。そのためには生活習慣の改善が欠かせない。
※週刊ポスト2015年12月18日号