芸能

山本圭 セリフは言葉の理を理解して息を絞って外に出すもの

 役者になってから映画デビューが早かった山本圭だが、役者としての基礎は舞台で培った部分が大きい。俳優座時代の先輩でもある仲代達矢と舞台で共演したことで知ったことについて山本が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 山本圭は1964年、日生劇場での俳優座二十周年記念公演『ハムレット』に出演、後には自身もハムレットを演じている。

「仲代(達矢)さんがハムレット、平(幹二朗)さんがホレイショー、市原悦子さんがオフィーリア。僕は後に立っている廷臣の役でした。仲代さんのハムレットを毎日見ていると、『なるほど』と勉強になりました。

『ハムレット』は長い時間をかけて一人の若い王子が人生を探求していく物語です。あの芝居は最初、歩哨が立っているところにホレイショーが現れて『誰だ』というセリフから始まります。その後も『誰だ』というセリフが何度も出てくる。つまり、『お前は誰だ』『自分は誰だ』『人間とは何だ』とリフレインしていく中で苦闘していく物語なんですよね。

 それを仲代さんは馬力で押し切るように演じ、平さんは優しい声でそれを支える役を演じる。それを見ていて『大変な芝居だ』と思いました。自分がハムレットをやるとは思ってもいませんでした。

 ただ、あの時にそれだけセリフを聞いていましたから、自分で演じていても仲代さんのトーンがフッと浮かぶんです。もちろん、仲代さんとは馬力も外見も違いますから違う芝居に見えたと思いますが、染み込んでいたものがセリフの調子として出てきましてね。

 セリフというのは、いくら大きい声で叫んでもダメです。言葉ですから、耳にして言葉として成り立ってなければいけません。声はそんなに出さなくても、息をしぼれば通る。言葉の理を理解して、息をしぼって外に出すんです」

 仲代達矢とその妻・宮崎恭子が主宰する劇団・無名塾の公演にも数多く出演してきた。

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